図書室。私の大好きな場所。
ここにいると心が落ち着く。
静かだし、読みたい本がたくさんあるし。
童話からノンフィクションまで、中学校の図書室としては冊数もかなり揃っていて最高。
わざわざ市の図書館まで行かなくていいほど。



今日は何読もうかな?
ちょっと悩んだ末、1冊の本を手に取り窓際の席で読み始めた。



「こんにちは。」



優しい声で挨拶をしてきた女の子。
図書委員のさいとうさんだ。



「こんにちは、さいとうさん。」



いつも私を見かけると、忙しい図書委員業務を抜けて私にわざわざ声を掛けにきてくれる優しい先輩。
見た目は1年の私より小さく、小学生のような幼さを残した3年の先輩。私がいうのもなんたが、とても可愛らしい。



「暖かくなってきたからエアコン切ってるんだけど、寒いなって思ったら遠慮なく声を掛けてね。」



「ありがとうございます。」



いつも色々気遣ってくれて、さいとうさんほんといーひとなんだよなぁ……。
素敵な先輩だ♡





キーンコーンカーンコーン…。





6時の合図の鐘がなった。
本に集中していたらあっという間に外が真っ暗になっていた。
図書室は6時までなのに!。
慌てて本を片付けて、カウンターにいるさいとうさんに挨拶をして帰ろうとしたとき。

 

「ねぇ、せっかくだからこの本読んでみない?今月の図書委員からのおすすめの本なの。」



……灰かぶり。
シンデレラってことか。



「子供の頃読んだでしょ?あれはとはまた、印象が違うんだ。こっちはね、原作そのままなの。子供向けに読まれている本とは内容が少し違う。」



へぇ……。違うって話は聞いたことあるけど、原作を読んだことは無かったな。さいとうさんのオススメだし、借りてみるか。



「じゃあ、お願いします。」



「了解、いま貸出カード書きますね。」



3/14 1-A 森本りな



さらさらっ、とさいとうさんが書いた私の名前。とてもきれいな字。
そういえば学校の図書室で本を借りたことなかったな。



「お待たせしました、どうぞ。」



ニコニコしながらさいとうさんは私に本を差し出した。
 


「ありがとうございます。」 



軽く会釈をして、私は図書室をあとにした。








『……素敵な夢を、りなさん。』