愛が溢れた御曹司は、再会したママと娘を一生かけて幸せにする

 それはきっと、見たいと思う暇もないほど充実した毎日だし、なにより素敵な人たちに囲まれて、みんなと過ごす時間のほうが楽しいと思えているからかもしれない。

 仕事をしていると時間はあっという間に過ぎていき、気づけば夕方の四時になろうとしていた。

「嘘、もうこんな時間!?」

 慌ててデータを保存して保育園へと向かった。

 凛が通っている保育園は、徒歩十五分の距離にある。歩を進めながら、四年前とは一変した商店街の姿に胸が痛む。

 私が来たばかりの頃はとても賑わっていた。だけど三年前に近くに大きなショッピングモールがオープンしてからというもの、客はそっちに流れていき、商店街は閑散としていった。

 その後、次々とみんな店を閉じていき、今では〝シャッター商店街〟なんて呼ばれるほど。

 経営を続けているのは、うちの洋菓子店と八百屋に魚屋、肉屋といった食品関係の店だけだった。

 店を閉めるのを機に移り住む人も少なくなく、温かく私を出迎えてくれた商店街の人たちは地元を離れていった。

 それからというもの、前から商店街の団結力は強かったけれど、残った人たちの絆はさらに強くなり、今では家族のような存在でもある。

「凛ちゃんのお迎えに行くの?」

 呼び止められて足を止める。声のしたほうに目を向けると、キャベツが入った段ボールを持ち上げた青果店の出石和泉(いでいし いずみ)がいた。