劇団四季の新作演目となれば、毎回満席御礼だ。今日もすべての席が埋まっている。左隣は同い年の恋人同士らしく、終始イチャイチャしていて居心地が悪い。開演前だからかなにをしても文句は言えないけれど、始まったらさすがに静かに鑑賞してくれるよね?

 幸いなことに左隣の男性は私と同じおひとり様のようで助かった。

 上演開始時刻となり、始まったミュージカル。ストーリーは知っているけれど、演者たちの演技が素晴らしくて見入ってしまう。

 隣の恋人たちも静かに鑑賞してくれて、素敵な物語の中にどっぷりと浸っていく。そして、物語も終盤に差し掛かった感動的な場面に目頭が熱くなる。

 やばい、泣きそう。

 両隣の人に泣き顔を見られたくなくて、咄嗟に黒のロングヘアで顔を隠す。こういう時、髪が長くてよかったと思う。
どうにか涙をこらえながら鑑賞していると、ふと右隣から鼻を啜る音が聞こえてきた。

 思わず見てしまうと、同い年か少し年上くらいの男性だろうか。アーモンドの形をした目からは涙が流れていた。
 初めて見る男性の涙があまりに綺麗で、思わず息を呑む。