三ヵ月も経つと、すっかりと常連客とは顔なじみとなった。みんな気さくに「萌ちゃん」と呼んでくれて、様々な話をしてくれた。

「お待たせしました、いらっしゃいませ」

 開店の時間を迎え、すぐに接客に入る。お客様から注文を聞いて箱に詰めて会計までするのが私の仕事だ。

「萌ちゃんのオススメはなに?」

「そうですね、やっぱりフルーツタルトです」

 博文さんが作るフルーツタルトは、日本で一番美味しいと思う。フルーツの酸味に合わせたクリームの甘さが絶妙で、タルト記事もしっとりしていて絶品なのだ。

「じゃあそれを五個ください」

「ありがとうございます」

 博文さんが経営する洋菓子店は、商店街の一角にある。商店街の歴史は古いようで老舗店が並ぶものの、ここ数年は近くに大型商業施設ができた影響で閑散としている。

 敬遠難に陥り、店を閉める人も多くなってきた。今ではシャッターが閉まっている店のほうが多いくらいだった。

 その中で文博さんの洋菓子店は人気を博していて、お昼を回る頃にはほとんど売り切れてしまうことも少なくない。