それからしばらくは、いつもと変わらない毎日を過ごした。

遥と一緒に仕事をし、時々一緒に夕食を食べてから帰って来る。

家に着いたら、まず初めに北斗にメッセージを送った。

短いやり取りをして、最後にお休みと締める。
そんな日が続いていた。

そのうちに気づいたことがある。

北斗は、一度も自分からメッセージを送ってこない。

いつもさくらが送ったメッセージに返信してくるだけだ。

(どうしてだろう。やっぱり私への気持ちは、もうないのかな…)

そんなふうに落ち込んでいた頃、北斗からの返信に、明日退院することになったと書かれてあった。

「え、凄い!良かったー」

さくらは、思わず声に出して喜び、すぐさま返事を打つ。

『退院おめでとう!本当に良かったです』

北斗からも、すぐに返事が来る。

『ありがとう!これもさくらのおかげです』
『ううん、そんなことない。でも本当に良かった。退院しても無理しないで、しばらくは安静にしてね。お手伝いに行きたいけど、行けなくてごめんなさい』
『お手伝いなんてそんな。さくらにはもう充分してもらったよ。ありがとう』

久しぶりの長いやり取りに、さくらは嬉しくなる。

『おじいさんも喜ぶね』
『どうかな?案外ひとり暮らしを満喫してたから、大して歓迎されないかも』
『そんなことないでしょう?でも、おじいさん、ひとり暮らし満喫してたんだ』
『そう。テレビのチャンネル争いもしなくて済むし、風呂にも入りたいときに好きなだけ長く入れるって喜んでた』

あはは!と、思わずさくらは読みながら笑う。

『おじいさんも元気そうで良かった。また会える日を楽しみにしていますって伝えてね』
『ありがとう。おじいも、さくらにまた会えるのを楽しみにしてるって。もちろん、俺も』

さくらは、胸がキュンとする。

『じゃあ、お休みなさい』

照れてしまって、それしか書けない。

『お休み、さくら』

北斗の返信を読むと、ふふっと笑って余韻に浸った。