祖母は、やはり歩くのも杖が必要で、見るからに不自由そうだった。

「おばあちゃん、おかず作ってきたの。冷蔵庫に入れておくね」

今朝、北斗の屋敷で作った時に分けて持ってきた容器を冷蔵庫に入れる。

掃除や洗濯も済ませると、昼食を用意して一緒に食べた。

祖母は、やはりさくらが来たことが嬉しいようで、終始笑顔でおしゃべりする。

「ねえ、おばあちゃん。おばあちゃんはずっとこの田舎で育ったの?」
「あら、急になんの話?」
「んー、ちょっと気になってね」

お茶を飲みながらさくらがそう言うと、祖母はゆっくりと話し始める。

「ここはね、私の、そのまたおばあちゃんの故郷なの。私は生まれも育ちも静岡よ」
「あれ?そうだったの?私、小さい頃、時々ここに遊びに来たのを覚えてるけど」
「そうよ、さくらが子どもの頃にはここに住んでたから」

ん?どういうこと?と、さくらは考え込む。

「私もね、さくらと同じように子どもの頃、ここに住むおばあちゃんに会いに来てたの。なんだか、この土地が好きでね。いつも懐かしく感じてた。あなたのお母さんが社会人になってひとり暮らしを始めた時、おばあちゃんの残したこの土地に家を建てて移り住んだのよ」
「ええー、知らなかった!」

ふふふ、と祖母はお茶を飲みながら笑う。

「そんなにこの土地が好きだったの?だって、何もない田舎なのに?」
「そうねえ、なんでなのかね?」
「え、そんな他人事みたいに…」
「だって本当によく分からないんだもの。でもね、なぜだかここにいるとホッとするのよ。帰るべき所に帰ってきたみたいな気がするの」