「北斗さん、このお部屋個室なの?」

他にベッドがないのを不思議に思ったさくらが尋ねる。

「ああ。本当はそうなんだけど、無理言ってさくらのベッドも入れてもらったんだ。田舎だからね、そういう融通は効きやすい」

そんなことを話していると、先程の看護師が、優しそうな雰囲気の40代くらいの医師を連れて戻ってきた。

「どれどれ、まずは神代さんの傷口から診ようかな」

そう言って、北斗のお腹の包帯を取り、傷口を覆ったガーゼをそっとめくる。

北斗が、少し顔をしかめた。

「ごめんよ、痛かったね。ああ、でも綺麗にふさがってる。我ながら上手くやったなあ、ははは!」

消毒をして、新しいガーゼを当てながら、医師は急に真剣な表情になった。

「でも、こんなに深い傷を負って助かったのは、不思議で仕方ないよ。オペ中も、まるで傷はここですと知らせてくれるみたいに出血が止まってた。しかもちゃんと心臓は動いているしね。私は思わず、救急隊員に聞いたんだよ。君は宇宙人を運んできたのか?ってね。そしたら、彼が言ったんだ。先生は、宇宙人と陰陽師、どちらを信じますか?って。私は、なるほどと納得した。そして彼に答えたんだ。私はSF映画より、時代劇の方が好きなんだってね。はい、処置終わり!」

北斗に笑顔を向けると、続いてさくらを振り返る。

「うん。脈も正常、顔色も悪くないね。念の為もう一度血液検査をして、問題なければ明日退院出来るよ」

さくらが、ありがとうございますと頭を下げると、二人ともお大事にね、と医師が出ていった。

残された看護師が、さくらに絆創膏を渡す。

「これでいいかしら?」
「はい!ありがとうございます」

さくらは、嬉しそうに笑って受け取った。