クールな許嫁の甘い独り占め。Ⅱ



「…それ、俺があげた香水?」

「そ、そうだよ…」

「付けてくれてるんだ」

「うん…」


嬉しいんだけど、更に誘惑してるようにしか思えないんだよな――…。


「あ、蒼永っ、みんな待ってるよ?」

「咲玖が誘ってくるからでしょ」

「誘ってないよ…!」


熟れた林檎みたいに真っ赤になって、上目遣いで見つめるこれは、誘ってるとしか思えない。

咲玖の頬に触れると、反射的にビクッと反応する。

――ああ、本当にかわいいな……。




「このバカップル!!」


咲玖の唇に触れる数センチというところで、背後から春日井の声がした。


「呼びに来て正解だったわ…ほんとにあんたらときたら……」

「いいい今行きますっ!!」


……やっぱ春日井たちがいる間はお預けか。


「九竜!住江くんがお手洗い借りたいって」

「ああ、廊下の突き当たり行って右にある」

「あ、ありがとう…」


住江は顔を赤らめ、気まずそうにしながら早歩きで廊下を渡る。


「ったく、ちょっとは自重しなさいよ。どーせこうなってると思って私も付き添ったんだから」

「悪い…」

「思ってないでしょう!」


いや、多少は思ってる。住江に気まずい思いさせたのは悪かった。