「…それ、俺があげた香水?」
「そ、そうだよ…」
「付けてくれてるんだ」
「うん…」
嬉しいんだけど、更に誘惑してるようにしか思えないんだよな――…。
「あ、蒼永っ、みんな待ってるよ?」
「咲玖が誘ってくるからでしょ」
「誘ってないよ…!」
熟れた林檎みたいに真っ赤になって、上目遣いで見つめるこれは、誘ってるとしか思えない。
咲玖の頬に触れると、反射的にビクッと反応する。
――ああ、本当にかわいいな……。
「このバカップル!!」
咲玖の唇に触れる数センチというところで、背後から春日井の声がした。
「呼びに来て正解だったわ…ほんとにあんたらときたら……」
「いいい今行きますっ!!」
……やっぱ春日井たちがいる間はお預けか。
「九竜!住江くんがお手洗い借りたいって」
「ああ、廊下の突き当たり行って右にある」
「あ、ありがとう…」
住江は顔を赤らめ、気まずそうにしながら早歩きで廊下を渡る。
「ったく、ちょっとは自重しなさいよ。どーせこうなってると思って私も付き添ったんだから」
「悪い…」
「思ってないでしょう!」
いや、多少は思ってる。住江に気まずい思いさせたのは悪かった。



