残り10秒。
3ポイントラインよりかなり下がった位置から、蒼永はシュートした。
その10秒間、まるでスロー再生で見ているようだった。
高く上がったボールは、そのままゴールを通過して落下する。
その瞬間、ホイッスルが鳴り響く。
正に劇的なブザービーターだった。
「試合終了!36-33で2Bの勝ち!!」
「キャーーーー!!勝った〜〜!!」
「ヤベェ!!すごすぎだろ!!」
「サイコーー!!」
クラスメイトの大歓声が響く。
中には泣いてる子もいる。
蒼永はチームメイトたちに囲まれ、活躍を労われていた。
「…っ、」
私はたまらなくなり、コートに向かって駆け出すと蒼永に思い切り抱きついた。
「蒼永…っ!!」
「咲玖…」
「あ、ありがとう…っ」
たくさんのギャラリーがいても関係なかった。
みんなに注目されても関係ない。
嬉しくて嬉しくて、それどころじゃないんだもん。
優しく抱きしめ返し、蒼永は笑顔を見せた。
「絶対勝つって言ったでしょ?」
「っ、うん…!」
もう涙腺が崩壊して止まらない。
ボロボロ泣く私を軽く持ち上げたかと思うと、そのまま横向きに抱っこされた。
つまり、姫抱きというやつだけど…、えっなんで!?
「咲玖のこと保健室連れてくから、あとよろしく」



