「俺が優しくしたいと思うのは咲玖だけだから」


一応咲玖の友達だから、邪険にするのは良くないと思った。
振り払うとかはせず、気持ち後ろに引いて距離を取る。


「どう見えてるか知らないけど、意図的に優しくするのは咲玖だけだよ」

「蒼永…」


いや、潤んだ瞳で見つめてくるとか反則じゃない?
咲玖は俺を煽る天才すぎないか?

また子どもじみた独占欲が胸を渦巻く。
咲玖にこんな顔させるのは、俺だけがいい――…


「うわ!なんかもうご馳走様って感じ!」

「え?」

「色んな意味でお腹いっぱいになっちゃった!そろそろ帰るね」

「あ、うん、気をつけてね翠夏ちゃん」

「ありがと〜。また学校でね咲玖ちゃん!
九竜くんもまた喋ってね〜」


華村は手をヒラヒラさせてカフェを出た。
俺たちもそのまま帰路に着く。


「ありがとね、蒼永」
「ん?」
「疲れてるのに付き合ってくれて」
「別にいいよ」
「あと、すごく嬉しかった…」


顔を赤くして嬉しそうにする咲玖がかわいくて、顔を覗き込んだ。


「何が?」
「えっ!だから、その…!」
「何が嬉しいの?」
「だ、だから〜〜!わかってるくせに!」


今日だけで何回思ったかわからないけど、やっぱりかわいい。
俺をこんな風にさせるのは、咲玖がかわいすぎるせいだと思う。

今も昔もこの先も、ずっと咲玖しか見えない。