クールな許嫁の甘い独り占め。Ⅱ



父さんは申し訳なさそうに肩を竦める。
父さんにもそんな顔させたいわけじゃないのにな。

結愛は弟子たちに嘘を振り撒いて外堀を埋めるつもりなのかもしれないけど、いずれは嘘だとわかることなら放置するしかないのか。

咲玖にはちゃんと話さないといけないな…。
大伯母と結愛が来て以来、咲玖とは会えていない。

電話でもいいから今の状況を伝えて、じいちゃんの手術が無事に終わるまで待っててもらう?
でも、正直俺が咲玖に会いたくて無理なんだけど。


「あ、蒼永〜さっき庭師さんがいらしてたから、勝手にお通ししちゃったんだけど大丈夫?」


え…………。

一瞬咲玖に会いたすぎて幻覚を見てるのかと思った。


「咲玖!?なんでいるの!?」

「あ、ごめん、実は…」

「すみませーん、宅配ですけどー」

「はーい」


宅配業者から荷物を受け取り、伝票を確認するなりテキパキと運ぶ咲玖。
あまりに自然だからぼうっとしてしまったけど、すぐにハッとして荷物運びを手伝った。


「しばらくずっとお手伝いしてたから、慣れちゃった。庭師さんにお茶出してくるね〜」


湯呑みの場所も茶葉の場所もちゃんと把握してる。
俺よりわかってるんじゃないか?


「ごめんね、忘れ物取りに来ただけだったんだけど、ちょうど庭師さんが見えたから勝手に取り次いじゃった」

「いや、それは構わないしむしろありがとう」