余計な心配をかけたくないし、不安にさせたくないから。

何があっても、咲玖のことは絶対に守る。
咲玖が隣にいない人生は考えられない。

その後、じいちゃんは茶山さんと何かを相談しに部屋を出た。


「…元はと言えば、俺が跡を継がなかったから。そのせいでこんなことになって、申し訳ない」


父さんが、頭を下げた。


「伯母の言いようにはさせないから」
「青人…」
「蒼永も、何も心配しなくていい」


……父さんにそんな顔させたくないんだけどな。
自分が全部責任を負うようなことはしないで欲しいし、そもそも責任に感じて欲しくもない。


「父さん、俺は……」

「ただいま〜!」


その時、咲玖が帰って来た。


「楽しかったしおいしかったよー!」


咲玖が帰ってきただけで、張り詰めていた空気が一気に和らぐ。

上機嫌でニコニコしている咲玖がかわいい。
やっぱり咲玖にはいつも笑顔でいて欲しいな。


「おかえり、咲玖」

「ただいま〜!なんかみんなで話してたの?」

「うん、ちょっとね」

「そっか。あ、聞いて。
私の目の前で怪我をされたおじいさんがいてね」

「そうなの?」

「なんか階段から落ちちゃったみたいで、咄嗟に助けられたからよかったけど、骨折とかしてないといいなぁ」

「咲玖は怪我してない?」

「私はしてないよ〜。
ねぇ蒼永、今度は二人で行こうね」

「うん…行こうね」


無邪気に笑う咲玖の体をそっと抱きしめる。


「咲玖、何があっても守るから…」

「えっ?うん??」


何も起こらないことが一番だけど、万が一のことがあったら――

その時は、全力で守る。

俺の全てを懸けてでも。