この業界で、瑛斗の祖父と並ぶほどの職人だが、それ故に妥協は許さず厳しい。当たり前のことなのだが、今の若者には厳しすぎるのだろう。辞めてしまう者も多い。そんな慎に認められている彼女は何者なのだろう。

 しかも、彼女からは女性特有の媚びた様子は全くみられない。

 挨拶に来ただけではなく、より効率良く仕事が出来るように、職人が後回しにしがちな片づけをして帰っていった。彼女のお陰で現場の仕事が捗る。

「どうだ?いい子だっただろう?」
「へ?」

 仕事中に珍しく慎から声を掛けられた。

「優ちゃんだよ。今時珍しいほどの純粋でいい子だ」
「慎さんが褒めるなんて珍しい……」
「ここのプランも見てみろ。オシャレを重視し過ぎた現場も多い中、シャレてはいるが長く使うことを考えて設計されてる」
「彼女が?」
「ああ。努力家で、お前さんと同じで一級建築士の資格も持っておる」
「……」

 二級建築士でも難しいが、一級建築士ともなると合格率も10%ほどとかなりの難関で、瑛斗もかなり勉強をした。