「そういうあなたは?」
素直に知りたいと思って聞いてみる。
「ん?沖田総司だけど?」
「・・・え?沖田総司・・・って、え?」
聞き間違えだろうか。聞き間違えだろう。
だけど、不安でつい質問してしまう。
「沖田総司って・・・沖田総司藤原春政?」
その瞬間、沖田総司さん(?)の雰囲気一気に冷たくなる。
「なんで、ぼくの本姓と諱を?」
「・・・あ」
やってしまった感が半端ない。
(・・・でも)
わかってしまった。一番信じたくないのに。
「・・・わたし、タイムスリップしちゃったみたい・・・です」
「は?たいむすりっぷ?何それ」
わたしの言った言葉に対する反応は、上の通りだった。
(まぁ、普通だよね。こんな反応)
とにかく、今はどうするのが正解なのだろうか。
(ってか、今って何月何日なんだろ?)
ということで聞いてみる。
「あの、今いつですか?」
「ん?文久三年三月十一日だけど?」
(三月十一日・・・壬生浪士組結成の前日、か)
そんな事を考えていると不意に沖田総司さん(もう本人と確定して良いだろう)が手を掴んできた。
「えっと・・・手、離してくれます?」
「え?いやです」
即答されてしまった。わたしのビックリした顔に気づいたのか、悪戯っ子のような笑みを向けられた。
「ふふ、だってきみ・・・かえでちゃん、だっけ?きみ、面白そうだもん」
(だもんって・・・子供か!)
「それになぜきみがぼくの本姓と諱、知ってるのかも気になりますしね」
(あぁ、そういえば言ったわーそんな事)
沖田総司さんはもう一度ニコッと笑うとわたしの手を握ったままスタスタと歩き出した。
(ちょ、痛い!それに歩くの速い!)
慌てて抗議しようと思ったがそれよりも先に沖田総司さんが口を開く。
「そういえば、かえでちゃんは何処出身なの?」
「えっと・・・三河?」
「なんで三河の人がここに?」
「さぁ・・・?」
「なんでよ・・・」
沖田総司さんがわたしの手を掴んでいない手でこめかみを叩いた。
「まぁ、とりあえずぼくたちの宿についたから話はそこで、ね?」