「桂さん、今のままなら日本は外国に乗っ取られてしまう。高杉さんは上海に行ったきわかるろう?もしかしたらあんな風に日本もエゲレスの植民地になるかもしれんがじゃ。うちはそれを止めたい。その為に協力してほしいがよ」
坂本さんの鋭い視線が三人に注がれる。
「お願いだ。うちは、この日本を守りたいんじゃ」
沈黙が続く。それは何十分の沈黙にも感じたけど、もしかしたらほんの数秒だったかもしれない。唯、言えるのは最初に沈黙を破ったのは高杉さんということだ。
「・・・わかった。俺は、長州を、日本を救いたい。俺は、坂本に協力する」
「本当か⁉︎」
「晋作が言うなら俺も」
そう言った入江さん。
「オレも。坂本さんは本当に日本のことを考えている。オレは、坂本さんを信じる」
「みんなあ・・・ありがとう!」
坂本さんが喜んでいるうちにわたしも言いたいことを言ってしまおうと口を開く。
「・・・ここにいるみんなは、確かに思想も考えも全然違うかもしれない。だけど、日本を守りたいと言う考えは一緒なの。だよね?源さん」
「!もちろんです!私も、日本を守りたい、その一心です!」
「ほら、ね?」
「井上殿・・・そうだな。俺たちは、結局、日本を守るためにそれぞれ足掻いているってことか・・・」
入江さんの呟きに妙に感心しているとなんの前触れもなく高杉さんが大袈裟に息を呑んだのが聞こえた。
「入江、お前・・・そんな良いこともたまには言うんだな・・・!俺、感動した・・・」
「あぁ⁉︎たまにとはなんだ⁉︎たまにって!俺が普段考えなしって言ってるのかぁ?」
「うん」
「うんじゃねぇよ!ちょっとは否定する素振り見せろよ!」
「・・・えっと、桂さん、あの人たちは、いつもあんな感じなのですか?」
「・・・あぁ。慣れればただの夫婦喧嘩みたいに聞こえるから、安心しろ」
井上さんの問いに悟りを開いたような顔で答える桂さん。
(夫婦喧嘩って、言い方・・・そんでもってそれで普通に納得する源さんって何⁉︎なんですぐに順応するの⁉︎)
源さんと桂さんは気が合ったのか、もう結構ラフに話しているのを横目にわたしは坂本さんの元へ向かう。
「あの・・・これからのことについて今のうちに話しません?」
「・・・あぁ、そうしようか。なぁ、薩摩と長州を組ませるとしたら、どうしたらえい思うか?」
「まぁ、一番は互いの利益になることを互いがするってことですよね」
「互いの利益・・・長州が今、一番望みゆーものは・・・あ!」
さすが坂本さん。閃くのが早い。
「そうすると薩摩は・・・米か?」
「多分、そうなりますよね。あと、買い付けは伊藤さんが言ったほうが良いです。まだ顔が知られていない割に、頭は切れると思うので」
「分かった。あぁ、あと例の金だが、とりあえずここに書いちゅーところはうちの名前を出いたら金を貸してくれるで」
「おぉ!ありがとうございます!」
「おい、坂本、なんの話だ?」
「今後の話や。ところで入江。今伊藤に連絡はつくか?」
「・・・どうでしょう。もう、彼らは海の上です」
「あ、手紙ならわたし、届けられますよ」
「は⁉︎本当か⁉︎」
「まぁ、あまりたくさんは書けませんよ」
わたしのサラを使えば二日か三日で届けることができるだろう。
「・・・なら、頼めるか?できるだけ早うこの状況を教えたい」
「分かりました。今ここで書きますか?」
「あぁ、そのつもりだが」
高杉さん(ってか、いつの間に喧嘩終わってた?)の言葉にわたしは常に携帯している紙を取り出す。
「これに書いてください。これよりも重いのは運べないので」
(嘘です!本当はわたしの血を含んでないと手紙を送れないからです!)
「分かった。ちょっと待っててな・・・」
そう言ってスラスラと手紙を書き終えた高杉さんは手紙を折るとわたしに手渡す。
「これで頼む」
「分かりました。今はちょっとアレなので、今日中に確実に届けます。それじゃあ、わたしはここでお暇しますね」
さすがにここでサラを見せることはできない。屯所に帰ってから飛ばそう。
できるだけ早く飛ばそうと退室の挨拶をすると慌てたように桂さんがわたしたちを引き留めた。
「そうだ、その浪士組の長に言伝を頼む」
「?いいですけど、なんですか?」
源さんの言葉に高杉さんは重々しく口を開いた。
「・・・最近、長州でおかしな病が流行っている。この病にかかると、呆けていると思ったら誰とも構わず人を殺そうとするんだ」
「っ!なんですかその病!」
叩きつけるように井上さんがいう。もちろんわたしも井上さんの気持ちが嫌というほど理解できる。なに、誰とも構わず人を襲うって!
「幸い、まだ長州の者しかかかっていない。というか、長州の者しかかからないんだ」
「長州の者しか、かからん・・・そがな病があるがか?」
坂本さんの疑問に答えたのは桂さん。
「まぁ、一口にそうとは言えないがな。オレらはまだかかっていないがもう長州全体の三、四割ほどがかかっている状況だ。そして、その中の幾人かがここ、京にいる」
「は⁉︎ここに⁉︎」
大声を出したわたしを咎めることなく、桂さんの話は続く。
「もし。そういう奴にあったら、迷わず殺してくれ。あいつらは京を危険に落とすだけの存在だ」
「・・・分かりました。その者の特徴とかは有ります?」
冷静に聞く源さんに入江さんが答える。
「1番の特徴は目だ。その病にかかった奴は、全員、死んだような目をしやがる。あと・・・」
「あと・・・?」
「・・・雰囲気」
「はい?」
「あとは雰囲気!なんか、こう、ムワッていうか、ゴワッていうか、そんな感じ!」
「は、はぁ・・・」
(なんか最後でさっきまでの重々しい感じ吹っ飛んじゃったんだけど・・・)
「とにかく、その人たちに気をつけよう、ってことね。分かった」
「あぁ、よろしくな」
そう言って、少し哀しそうに笑った彼らをみて、わたしは何も言えなかった。
坂本さんの鋭い視線が三人に注がれる。
「お願いだ。うちは、この日本を守りたいんじゃ」
沈黙が続く。それは何十分の沈黙にも感じたけど、もしかしたらほんの数秒だったかもしれない。唯、言えるのは最初に沈黙を破ったのは高杉さんということだ。
「・・・わかった。俺は、長州を、日本を救いたい。俺は、坂本に協力する」
「本当か⁉︎」
「晋作が言うなら俺も」
そう言った入江さん。
「オレも。坂本さんは本当に日本のことを考えている。オレは、坂本さんを信じる」
「みんなあ・・・ありがとう!」
坂本さんが喜んでいるうちにわたしも言いたいことを言ってしまおうと口を開く。
「・・・ここにいるみんなは、確かに思想も考えも全然違うかもしれない。だけど、日本を守りたいと言う考えは一緒なの。だよね?源さん」
「!もちろんです!私も、日本を守りたい、その一心です!」
「ほら、ね?」
「井上殿・・・そうだな。俺たちは、結局、日本を守るためにそれぞれ足掻いているってことか・・・」
入江さんの呟きに妙に感心しているとなんの前触れもなく高杉さんが大袈裟に息を呑んだのが聞こえた。
「入江、お前・・・そんな良いこともたまには言うんだな・・・!俺、感動した・・・」
「あぁ⁉︎たまにとはなんだ⁉︎たまにって!俺が普段考えなしって言ってるのかぁ?」
「うん」
「うんじゃねぇよ!ちょっとは否定する素振り見せろよ!」
「・・・えっと、桂さん、あの人たちは、いつもあんな感じなのですか?」
「・・・あぁ。慣れればただの夫婦喧嘩みたいに聞こえるから、安心しろ」
井上さんの問いに悟りを開いたような顔で答える桂さん。
(夫婦喧嘩って、言い方・・・そんでもってそれで普通に納得する源さんって何⁉︎なんですぐに順応するの⁉︎)
源さんと桂さんは気が合ったのか、もう結構ラフに話しているのを横目にわたしは坂本さんの元へ向かう。
「あの・・・これからのことについて今のうちに話しません?」
「・・・あぁ、そうしようか。なぁ、薩摩と長州を組ませるとしたら、どうしたらえい思うか?」
「まぁ、一番は互いの利益になることを互いがするってことですよね」
「互いの利益・・・長州が今、一番望みゆーものは・・・あ!」
さすが坂本さん。閃くのが早い。
「そうすると薩摩は・・・米か?」
「多分、そうなりますよね。あと、買い付けは伊藤さんが言ったほうが良いです。まだ顔が知られていない割に、頭は切れると思うので」
「分かった。あぁ、あと例の金だが、とりあえずここに書いちゅーところはうちの名前を出いたら金を貸してくれるで」
「おぉ!ありがとうございます!」
「おい、坂本、なんの話だ?」
「今後の話や。ところで入江。今伊藤に連絡はつくか?」
「・・・どうでしょう。もう、彼らは海の上です」
「あ、手紙ならわたし、届けられますよ」
「は⁉︎本当か⁉︎」
「まぁ、あまりたくさんは書けませんよ」
わたしのサラを使えば二日か三日で届けることができるだろう。
「・・・なら、頼めるか?できるだけ早うこの状況を教えたい」
「分かりました。今ここで書きますか?」
「あぁ、そのつもりだが」
高杉さん(ってか、いつの間に喧嘩終わってた?)の言葉にわたしは常に携帯している紙を取り出す。
「これに書いてください。これよりも重いのは運べないので」
(嘘です!本当はわたしの血を含んでないと手紙を送れないからです!)
「分かった。ちょっと待っててな・・・」
そう言ってスラスラと手紙を書き終えた高杉さんは手紙を折るとわたしに手渡す。
「これで頼む」
「分かりました。今はちょっとアレなので、今日中に確実に届けます。それじゃあ、わたしはここでお暇しますね」
さすがにここでサラを見せることはできない。屯所に帰ってから飛ばそう。
できるだけ早く飛ばそうと退室の挨拶をすると慌てたように桂さんがわたしたちを引き留めた。
「そうだ、その浪士組の長に言伝を頼む」
「?いいですけど、なんですか?」
源さんの言葉に高杉さんは重々しく口を開いた。
「・・・最近、長州でおかしな病が流行っている。この病にかかると、呆けていると思ったら誰とも構わず人を殺そうとするんだ」
「っ!なんですかその病!」
叩きつけるように井上さんがいう。もちろんわたしも井上さんの気持ちが嫌というほど理解できる。なに、誰とも構わず人を襲うって!
「幸い、まだ長州の者しかかかっていない。というか、長州の者しかかからないんだ」
「長州の者しか、かからん・・・そがな病があるがか?」
坂本さんの疑問に答えたのは桂さん。
「まぁ、一口にそうとは言えないがな。オレらはまだかかっていないがもう長州全体の三、四割ほどがかかっている状況だ。そして、その中の幾人かがここ、京にいる」
「は⁉︎ここに⁉︎」
大声を出したわたしを咎めることなく、桂さんの話は続く。
「もし。そういう奴にあったら、迷わず殺してくれ。あいつらは京を危険に落とすだけの存在だ」
「・・・分かりました。その者の特徴とかは有ります?」
冷静に聞く源さんに入江さんが答える。
「1番の特徴は目だ。その病にかかった奴は、全員、死んだような目をしやがる。あと・・・」
「あと・・・?」
「・・・雰囲気」
「はい?」
「あとは雰囲気!なんか、こう、ムワッていうか、ゴワッていうか、そんな感じ!」
「は、はぁ・・・」
(なんか最後でさっきまでの重々しい感じ吹っ飛んじゃったんだけど・・・)
「とにかく、その人たちに気をつけよう、ってことね。分かった」
「あぁ、よろしくな」
そう言って、少し哀しそうに笑った彼らをみて、わたしは何も言えなかった。