わたしが朝ごはんを食べ終わって剣道場へ行くと既に隊士たちは準備満タンの状態だった。

「やっときたかよ!遅いじゃねぇか!」

(いや、朝ごはんを食べる時間ぐらいちょうだいね)

「土方さん、この試合って、木刀ですか?」

「あー総司、これ、木刀で試合したら・・・」

「いろいろ大変だから竹刀にしましょ!ぼく、あいつらのために仕事増えるのはイヤです!」

「はぁ、ってことだ」

「はーい!あ、そっちは別に木刀でもいいからねー」

わたしはそれだけ言って新八ちゃんの近くにあった竹刀を手にとる。

何回か竹刀を振ってみて感覚を確かめてからさっきの場所に戻る。あ、あっちも竹刀なのね。木刀の方が殺傷率上がるのに・・・


「かえで。今回はお前が提案した勝負だ。本来ならこっちが試合内容を決めるが、なにか配慮して欲しいことはあるか?」

「えっと、めんどくさいので、みんな一斉にかかってくれるとすっごく助かります」

「はぁ⁉︎俺たちのこと舐めてんのかよ⁉︎」

「ん?当たり前じゃないの。ってか、あなたたちがわたしをボコボコにできるって思ってる?大丈夫。そんな希望は一瞬で潰えるから、ねぇ?」

「何言ってんだ!土方さん、早く始めてください」

「はぁ・・・どうなっても知らねぇからな・・・では、始め!」

「・・・」

風が、吹く。

「ふぅ、お掃除完了〜!」

「・・・は?」

そこから一歩も動いていないように見えるわたしをみて、わたしの言った言葉を聞いて、全員が分からない、と言うように目を瞬く。否、全員では無かった。総司さんと、山南さんそして安藤くんだけは何が起きたのか理解し、驚愕の視線をわたしに向ける。

(三人共、動体視力がいいんだろうな・・・)

三人の視線が刺さるのを感じながらわたしは土方さんに一礼して元の場所に竹刀を置く。

ー刹那

「ぐっ・・・」

「かはっ・・・」

そんな呻き声を最後にさっきまで立っていた人が、土方さんを除いて全員倒れる。

「・・・!」

全員がやっと理解したと言うようにわたしに視線を向けたのがわかった。

そう。わたしは試合が始まった瞬間に全員の首筋に手刀を叩き込んだのだ。もちろん、後遺症が残らないようにしたよ?あ、これ、もし失敗したら相手が死んじゃったり、四肢が麻痺したりしちゃうから、絶対にマネしちゃダメだからね⁉︎

そして、みんなは早すぎて何が起こったか頭も、体も理解してなくて棒立ちになってたけど、すぐに体が理解して気絶しちゃった、ってとこかな?

「あの、すみません。この人たちどうにかしておいてください」

「あ、あぁ・・・」

遠くで「ほら、ぼくの言った通りでしょ?」という総司さんの声を聞きながらわたしは転がっている竹刀を回収いしていった。

この日から、浪士組の禁忌の一つに「本宮かえでを怒らせる」が入ったとか・・・