「じゃあまた!」
涼音さんのお店でお土産を買ってその会計を見届けて外に出ると日は半分ほど沈んでいた。
「これ、帰るの日が沈んでからになるかも・・・」
「総司、気をつけろよ」
「分かってるよ〜」
呑気に言いつつ、目が笑ってない。周りの気配に気を遣っていることがわかる。
(うーん・・・わたしも紅葉、出した方がいいかも・・・)
せめて、自分のみぐらいは自分で守らないと。
左耳につけている、小さな楓のイヤリングに手を伸ばす。
(二人が前を向いてる間に・・・)
「・・・っ!誰だ!」
紅葉にオーラを注ごうとした途端、一さんの鋭い声が響き渡る。
「・・・あぁ、気づいちゃったか」
どこからか声がする。
(・・・!この声、今日涼音さんの店にいた・・・!)
あの、優しげ笑顔さんだ。
「きみ、さっきの栗餅屋さんにいたよね?さっさと出てきてよ。殺気、漏れてるし」
「・・・!はいはい、出てきますよ・・・」
そう言って彼は砂利を踏む音を響かせながらわたし達の方へやってきた。
「初めまして・・・じゃないか。さっきぶりだね」
刀を構えながら一歩一歩わたし達の方へ向かってくる。
「僕は、悠。真夜悠だ。君たちは?」
「ぼくは・・・沖田総司」
「・・・斎藤一」
「ふーん・・・君は?」
二人の自己紹介を軽く聞き流してわたしの名前を聞いてきた。
「・・・かえで。本宮、かえで」
「かえで、か・・・君の名前が聞けてよかったよ」
悠が後ろを向いて此処を去ろうとしたのを総司さんが刀を抜いて止める。
「ちょっと、名前だけ聞いて去る気?」
無言で一さんも抜刀する。
「君たち、本気?」
「あぁ、本気だよ。たとえきみがぼくより強くてもね」
(・・・!総司さん、この人の強さを気づいて・・・!)
総司さんが言う通り、この人は強い。
(わたしでも上手くいって・・・相打ち)
総司さんや一さんがどこまでできるのかは松平様の御前試合でしか見たことないから知らない。
(総司さん達が悠と戦っている間に紅葉を・・・!)
わたしはさっきみたいに楓のイヤリングにオーラを流す。
「我、紅葉の正統なる継承者なり。我の願いに答えよ。我に力を。我に戦う術を」
(うぅ、こんな厨二病満載のセリフ、誰が考えたのよ!)
こんなのみんなに聞かれたくない。わたしはできるだけ早口で、小声で唱える。
唱え終わると、イヤリングがぼぉっとほのかな光を放つ。楓の部分だけ取れて重力に逆らえず落ちていく間にどんどん楓の形は薄れて、刀になっていく。
「っと」
完全に光が消えるとそこにはあの小さなイヤリングではなく、立派な刀があった。
「・・・久しぶり、紅葉」
「・・・っ!」
久しぶりの呼び出しで周りを疎かにしてた。そういえば総司さんと一さん、戦ってたんだ!
(あれ?一さんは・・・?)
いつのまにか一さんはどっかいっていて、総司さんだけで悠と戦っていた。
「なかなかやるじゃん。でも、これで終わり」
「総司さん!」
「!かえで、ちゃん・・・?」
「あとは任せて!」
悠の一撃をギリギリで捌く。
「・・・!これを、捌くのか・・・?」
「今からはわたしが相手だよ」
「おもしろくなってきたじゃないか・・・!」
息をする間もなく速い、重い攻撃がわたしを襲う。わたしはそれを躱しつつ、攻撃を入れていく。
もう何回攻撃しただろう。わたしと悠はどちらもまだ一回も相手に傷をつけていない。
(今日は、半月・・・なら!)
わたしは一瞬、足を獣化させる。急に早くなったわたしの動きに悠の刃先が一瞬狂う。
「っ!そこ!」
狼の足で一気に間合いを詰める。その勢いに任せて紅葉を振り下ろす。
「くっ、ここまでとは・・・!」
紅葉にあたってついた頬の傷から血が滴る。それを見た瞬間、わたしの中で何かが弾けた。
(血、新鮮な、人の、血・・・)
本来、かえでは人の血を飲まなくても生きていける。人狼とのハーフだからだ。血は一週間に一度、輸血パックで接種すればいい。だけど、この時は状況が悪すぎた。紅葉使うために大量のオーラを消費したため、本人は理解していないが体がオーラに替わるものー人の血ーを欲していたのだ。
勿論、普通だったら我慢できていた。だけど悠を切ったことにより新鮮な血を認識してしまう。これにより、心の奥底にあった「血を飲みたい」と言う願望が表面化してしまったのだ。
(の、飲みたい、ダメでしょ!人を傷つけちゃダメ・・・!)
「ん?どうしたの?急に立ち止まって?もしかして、これが限界・・・な訳ないか」
そんな声が意識の外から聞こえる。そうだよ、って言いたいけどそんな余裕はない。わたしは今、理性と本能の争いを仲裁するので精一杯なのだ。
「・・・ま、このまま殺してもいっか。うん!そういう指令だし」
(?指令・・・?)
一瞬そっちに意識が行ったが、すぐに殺されると言う言葉に真っ青になる。
(に、逃げなきゃ・・・!)
だけど、悠は一気にわたしとの間合いを詰める。
「じゃあね、かえで」
(っ、殺られる・・・!)
思わず目を閉じて痛みを覚悟した。
涼音さんのお店でお土産を買ってその会計を見届けて外に出ると日は半分ほど沈んでいた。
「これ、帰るの日が沈んでからになるかも・・・」
「総司、気をつけろよ」
「分かってるよ〜」
呑気に言いつつ、目が笑ってない。周りの気配に気を遣っていることがわかる。
(うーん・・・わたしも紅葉、出した方がいいかも・・・)
せめて、自分のみぐらいは自分で守らないと。
左耳につけている、小さな楓のイヤリングに手を伸ばす。
(二人が前を向いてる間に・・・)
「・・・っ!誰だ!」
紅葉にオーラを注ごうとした途端、一さんの鋭い声が響き渡る。
「・・・あぁ、気づいちゃったか」
どこからか声がする。
(・・・!この声、今日涼音さんの店にいた・・・!)
あの、優しげ笑顔さんだ。
「きみ、さっきの栗餅屋さんにいたよね?さっさと出てきてよ。殺気、漏れてるし」
「・・・!はいはい、出てきますよ・・・」
そう言って彼は砂利を踏む音を響かせながらわたし達の方へやってきた。
「初めまして・・・じゃないか。さっきぶりだね」
刀を構えながら一歩一歩わたし達の方へ向かってくる。
「僕は、悠。真夜悠だ。君たちは?」
「ぼくは・・・沖田総司」
「・・・斎藤一」
「ふーん・・・君は?」
二人の自己紹介を軽く聞き流してわたしの名前を聞いてきた。
「・・・かえで。本宮、かえで」
「かえで、か・・・君の名前が聞けてよかったよ」
悠が後ろを向いて此処を去ろうとしたのを総司さんが刀を抜いて止める。
「ちょっと、名前だけ聞いて去る気?」
無言で一さんも抜刀する。
「君たち、本気?」
「あぁ、本気だよ。たとえきみがぼくより強くてもね」
(・・・!総司さん、この人の強さを気づいて・・・!)
総司さんが言う通り、この人は強い。
(わたしでも上手くいって・・・相打ち)
総司さんや一さんがどこまでできるのかは松平様の御前試合でしか見たことないから知らない。
(総司さん達が悠と戦っている間に紅葉を・・・!)
わたしはさっきみたいに楓のイヤリングにオーラを流す。
「我、紅葉の正統なる継承者なり。我の願いに答えよ。我に力を。我に戦う術を」
(うぅ、こんな厨二病満載のセリフ、誰が考えたのよ!)
こんなのみんなに聞かれたくない。わたしはできるだけ早口で、小声で唱える。
唱え終わると、イヤリングがぼぉっとほのかな光を放つ。楓の部分だけ取れて重力に逆らえず落ちていく間にどんどん楓の形は薄れて、刀になっていく。
「っと」
完全に光が消えるとそこにはあの小さなイヤリングではなく、立派な刀があった。
「・・・久しぶり、紅葉」
「・・・っ!」
久しぶりの呼び出しで周りを疎かにしてた。そういえば総司さんと一さん、戦ってたんだ!
(あれ?一さんは・・・?)
いつのまにか一さんはどっかいっていて、総司さんだけで悠と戦っていた。
「なかなかやるじゃん。でも、これで終わり」
「総司さん!」
「!かえで、ちゃん・・・?」
「あとは任せて!」
悠の一撃をギリギリで捌く。
「・・・!これを、捌くのか・・・?」
「今からはわたしが相手だよ」
「おもしろくなってきたじゃないか・・・!」
息をする間もなく速い、重い攻撃がわたしを襲う。わたしはそれを躱しつつ、攻撃を入れていく。
もう何回攻撃しただろう。わたしと悠はどちらもまだ一回も相手に傷をつけていない。
(今日は、半月・・・なら!)
わたしは一瞬、足を獣化させる。急に早くなったわたしの動きに悠の刃先が一瞬狂う。
「っ!そこ!」
狼の足で一気に間合いを詰める。その勢いに任せて紅葉を振り下ろす。
「くっ、ここまでとは・・・!」
紅葉にあたってついた頬の傷から血が滴る。それを見た瞬間、わたしの中で何かが弾けた。
(血、新鮮な、人の、血・・・)
本来、かえでは人の血を飲まなくても生きていける。人狼とのハーフだからだ。血は一週間に一度、輸血パックで接種すればいい。だけど、この時は状況が悪すぎた。紅葉使うために大量のオーラを消費したため、本人は理解していないが体がオーラに替わるものー人の血ーを欲していたのだ。
勿論、普通だったら我慢できていた。だけど悠を切ったことにより新鮮な血を認識してしまう。これにより、心の奥底にあった「血を飲みたい」と言う願望が表面化してしまったのだ。
(の、飲みたい、ダメでしょ!人を傷つけちゃダメ・・・!)
「ん?どうしたの?急に立ち止まって?もしかして、これが限界・・・な訳ないか」
そんな声が意識の外から聞こえる。そうだよ、って言いたいけどそんな余裕はない。わたしは今、理性と本能の争いを仲裁するので精一杯なのだ。
「・・・ま、このまま殺してもいっか。うん!そういう指令だし」
(?指令・・・?)
一瞬そっちに意識が行ったが、すぐに殺されると言う言葉に真っ青になる。
(に、逃げなきゃ・・・!)
だけど、悠は一気にわたしとの間合いを詰める。
「じゃあね、かえで」
(っ、殺られる・・・!)
思わず目を閉じて痛みを覚悟した。