「次は・・・ここですね!」

総司さんに引きずられるようにしてついたのはさっきの栗餅屋さんから歩いて十分ほどのところにある、お饅頭屋さん。

「いらっしゃい!」

「お姉さん、みたらし団子十・・・二十二個ください!」

「二十っ・・・⁉︎わ、わかった!」

(え?総司さん、一人で二十個食べるつもりなの・・・?)

「おいおい・・・」

流石に一さんも呆れてため息をついている。

「あの、一さん・・・食べたこともないみたらし団子を二十個も頼んで大丈夫なの?」

「・・・あぁ」

一さん曰く、このお店は浪士組一行が京都についた時に寄ったところらしい。

「此処のみたららし団子は美味い。それは保証する」

「あ、そうなんだ」

「それと、総司にとってはみたらし団子を二十個食べるのは普通だ・・・あの件以降、それを実感した」

「・・・何があったんですか?」

聞いてはいけないことかもしれないけど、凄く気になる、うん。

「あれは、俺が試衛館に来て初めての秋だった」

(唐突に始まる昔話!)

「試衛館の皆で月見をしようということになってな、源さんが大量の月見団子を作って、誰かに食べられないように交代で見張りをすることになったんだ・・・」

(あ、フラグたった)

「月見の時間になり、全員で縁側に行くと・・・見張りだった総司と何も乗っていない三方しかなかった」

「あちゃぁ・・・」

「それ以来、月見の番は専ら総司に団子を食べられないように見張る係となった・・・まぁ、毎年五、六個ほど食べられるがな」

「へ、へぇ・・・」

呆れることしかできない。

(なんで見張ってるのにお団子食べられるのよ⁉︎)

「・・・」

わたしの視線から逃れるように目を逸らす一さん。

(もう、この話題はやめよう。周りの雰囲気が悪くなる・・・)

「かえでちゃん〜一く〜ん!早く来てよ〜!」

声のした方へ顔を向けると、さっさと四人がけの席を陣取っていた総司さんがいた。

「あぁ、今行く」

席につくと待っていましたとばかりにみたらし団子を乗せたお皿がドンドン運ばれてくる。最初の二皿以外は全部総司さんの元に運ばれる。その数、二十皿。

「うわぁ・・・美味しそう・・・!いただきます!」

早速総司さんが食べ始めるのに続いてわたしもみたらし団子を口に入れる。

「・・・!甘い・・・!」

砂糖が高級品の仲間だったこの時代。こんなに甘いのはこの時代に来て初めて食べた。

(これ、何個でも食べられる・・・!)

総司さんがあれだけ頼んだのも納得。

その総司さんはわたしの正面でブラックホールの如くみたらし団子を消化していく。

(・・・総司さん、ちゃんと味わってるの・・・?)

私たち二人が食べ終わって身総司さんは休まず食べ続ける。

(総司さん、なんでこんなに甘いもの食べてるのに太ってないの・・・?羨ましい・・・)

食べ終わって空になったお皿が回転寿司のお皿みたいに積み上がっていく。

(残り五皿・・・)

このぐらいになると周りのお客さんの視線ははほとんど総司さんに集まっていた。勿論、そばにいる私たちにも視線が集まる。

(うぅ・・・視線が痛い・・・って、あれ?)

今一瞬、会ったことのある人の気配がした。だけど、一瞬だったし、特に気にしてなかったから誰の気配かがわからない。

(えっと・・・浪士組かな?いや、それだったらわかる・・・でも平隊士の気配もわかる?って言われると微妙・・・)

必死に思い出しているうちに総司さんの前にあるお皿はあと一皿になっていた。

「んぅ〜おいしかった!ごちそうさま・・・って、え⁉︎」

総司さんが食べ終わると同時にあちこちから喝采が飛ぶ。

(この人、ホントに食べ切っちゃったよ・・・)

「え⁉︎かえでちゃん?なんでぼく拍手されてるの?え?」

(視線感じてなかったの・・・?マジか・・・)

「総司がみたらし団子を全便食べ切ったから、だ」

親切な一さんが今の状況を教えてくれる。

「あ、そうなんだ〜ありがとう〜!」

(は、反応がアイドル・・・この人、アイドルの素質あるんじゃない?)

うん。絶対素質ある。あんなに視線を向けられてても集中してたし、こんなすぐにファンサ・・・じゃない、お礼を言えるんだもん。

(これ、総司さんファンクラブできるのも、時間の問題かも)

呑気に会計をしている総司さんを見て、そう思うしかなかった。


ちなみに後日談だけど、あのあと「あの笑顔が可愛すぎる!あの見た目で甘いもの好きは堕ちる!」と総司さんファンクラブならぬ沖田総司親衛隊ができたそう。で、わたしはそんな総司さんと気軽に話せる間柄と言うことで女の子達からのやっかみを受けたりしたけど、それはまた別の機会で話すね。(話す予定あるのかな・・・?)