その言葉に思わずため息をついてしまった。落胆のため息ではない。感嘆のため息だ。

「すごいですね・・・その通りです。わたしはこの時代の人間ではありません」

「はぁ⁉嘘だろ?」

驚いたように言う左之さん。

「あ、証拠、ほしいですか?原田左之助忠一さん?」

目を丸くする平助くん。

「ウソだろ・・・左之の諱も・・・?」

「あ、あとお腹に刀傷があるのも知ってますよ。子供の頃に切腹騒ぎを起こして」

「あ、当たりだ・・・」

「すごいな・・」

目を丸くする一さん。

(あ、この人無口無表情なのかなって思ってたけど、こんな顔もするんだ・・・)

そんな関心はともかく。

(この人達、信じるの早すぎない・・・?)

わたしの隣にいる誰かさんと大違いだ。

(もしくは、二人が疑い深かっただけ・・・?)

「なぁ、未来には俺たちの事有名なのか?」

(ちょ、ち、近い!)

わたしにグイっと詰め寄った新八ちゃんを源さんが引っ張る。

「こら、かえでさんが困ってるでしょう?それに、かえでさん、顔がつかれているように見えます。今日は休ませてあげましょう?」

(え・・・?わたしが疲れてたこと、気づいてたの・・・?)

疲れていたことは本当だ。慣れない新幹線や電車に乗って、その後にタイムスリップだ。全くリラックスできていなかった。

(でも、顔には出さないようにしてた、はず・・・なのに・・・)

「あ、本当ですね。空いている部屋ありましたっけ?あ、かえでちゃん、何か希望ある?」

総司さんの質問に即答する。

「太陽の光が当たらないところがいいです」

近藤さんがびっくりしたように目を丸くした後、少し考える素振りを見せる。

「は・・・?わ、分かった。」

近藤さんがびっくりしたように目を丸くした後、少し考える素振りを見せる。

「あるにはあるが・・・日が当たらなくていいのか?」

「はい。お願いします」

「そうか・・・じゃ、総司の隣だな」

「あ、ぼくの隣?じゃ、ぼくが案内するよ。いい?」

わたしは頷く。総司さんはそれを確認するとわたしの荷物をもって部屋を出る。

(あ、待って・・・!)

「それは大丈夫です。わたしが持ちます」

「え?でもこれ、結構重いよ・・・?」

驚いたようにキャリーバッグを見る総司さん。

「これ、持ち上げるんじゃなくて、下にある車輪で・・・」

わたしは一旦キャリーバッグを降ろしてコロコロ転がしてみる。

「へぇ、便利ですねぇ・・・」

総司さんはキャリーバッグをわたしに預けてスタスタと先に進む。

(以外に遠いな・・・)

ほぼ無意識に歩いていたら突然何かにぶつかった。

「ちょ、かえでちゃん、大丈夫?」

当たってしまったのは総司さんだったようだ。彼はある部屋の前で立ち止まっていた。

「ここがかえでちゃんの部屋だよ。ぼくはその隣」

(あ、ここが・・・)

入ってみると思っていたよりも広い。そして、希望したように太陽光は入ってきていない。

(うーん。少し暗いのは・・・当たり前か。明日蝋燭もってこないと)

軽く総司さんに物の配置を教えてもらって布団を敷く。未来ではベッドだったから布団を敷くのは初めてだ。

(う・・・ちょっと重い・・・)

布団を敷き終わったらやっと就寝の時間だ。

「ありがとうございました。総司さん」

「ううん、大丈夫だよーそれじゃ、おやすみ」

笑顔で部屋を出て行く総司さん。わたしは彼を見送った後、すぐに布団に潜り込む。

(ん・・・床がちょっと固いかな・・・明日は、とりあえず、荷物の、整理・・・)

明日の予定を決めながら、わたしは眠りについた。