顔を覗きはじめた太陽から身を隠すように、駅のロータリーの隅で綴とチカくんの到着を待つ。

ビニールシート、日焼け止め、ビールサンダル、タオル、モバイルバッテリー。それと念のために予備の着替え。

思いのほか、荷物はけっこうな量になった。
トートバッグが肩に食い込む。

海に興味なんてない。
そう思っていたのに、昨夜はそわそわしてあまり眠れなかった。
まるで遠足の前日。あくびが止まらない。
軽く伸びをして、眠気をどうにか軽減しようと足掻いてみる。

三回目の伸びをしたとき、目の前で一台の車が止まった。
でんとした車高の高い真っ黒な車体に少し身構えると、運転席にはチカくんの姿。

人差し指で後部座席を指されたので、あたしは車に乗り込んだ。
ひんやりした車内に、汗がさあっと冷やされていく。

「おはよう。待たせたかな」

「ううん、ちょうどよかった。でも、綴がまだ来てなくて。家を出るって連絡はあったんだけど」

スマホを見ると、ちょうど綴から電話がかかってきた。
電車が遅れてるのかな、と思いながら電話に出た。

「綴、どこにいるの? チカくんと合流して、あたしもう車に乗ってるよ」