――またあしらわれてる。

――お前が輝子さんに相手にされるわけないだろう。


周りの人たちはその男の人をからかって、楽しそうに笑った。
おそらく、こういうやり取りは日常茶飯事だったのだろう。

あたしはそっとその場を去り、もらったお菓子をぜんぶゴミ箱に捨てた。

チョコチップ入りのクッキーも、動物のかたちをしたカラフルなグミも。
みんなみんな、真っ逆さまに暗い穴の底。

もちろんお菓子に罪はない。
それでも、持っているだけで手のひらから自分がぬめぬめと毒されていくような気がして我慢ならなかった。

「よし、いい感じ。食べよ食べよ」

鉄板を見ると、もんじゃ焼きはふつふつと波打っていた。

「デザート系もんじゃもやっぱり頼もう」と綴はすでに次のもんじゃ焼きのことを考えている。
体型のわりによく食べる。
綴に「まだ食べられるよね? 食べようよ」とせっつかれたチカくんは、目尻を下げて微笑んだ。


海。帰省。車。チカくんの実家。
どれもこれも、あたしにとっては「へえ」という具合だけど、こんなにふたりが楽しそうなら悪くない。

すっかり友達のようになったふたりに、あたしはメニューを差し出した。