洗濯物が一瞬で乾きそうな昼下がり、あっちゃんは四方を保冷剤でがちがちに囲んだゼリーと花束を持ってやってきた。

お線香から細い煙がすうっと流れ、湿った深い森の香りが一瞬、濃く香る。
ママの遺影を見つめるあっちゃんの瞳が、じわりと滲んだ。

「来てくれてありがとう、あっちゃん。お花も、すごくきれい」

もらった花を花瓶に生けて祭壇に飾った。
彩度の高い凛とした桔梗は、ママにとてもよく似合う。

「どういたしまして。でも、この暑さだとあんまり持たないかもね」

苦笑したあっちゃんはショートヘアを耳にかけ、ぱたぱたと顔を扇いだ。

「エアコンもっと下げようか」

「ううん、大丈夫」

「そう? あ、お茶用意するからソファーに座ってて」

きんきんに冷やしておいたアイスティーや、あっちゃんが持ってきてくれたゼリーをテーブルに並べた。
ママのいなくなったアパートには慣れてきたけど、こうしてママ抜きであっちゃんと会うのは、やっぱりなんだかおかしな感じがする。
そわそわして、落ち着かない。

そのうち慣れていくんだろうか。