恋愛は苦手です。でも恋の神様やってます。

しん……と静まり返った部屋。

どうしていいか、分からない。
こんなに相思相愛で幸せそうなのに?
お金ってそんなに大切なの?



「……桐谷様、それはお父上のお考えですか?それとも桐谷様の……?」
母が優しく問う。
どんな関係だかわからないけど、赤ちゃんの時からの知り合いなんだもんな。
色々思うところはあるだろう。

すると首を横に振りながら
「いいえ、私です。桐谷グループの社員を抱えているのです。倒産させて皆を路頭に迷わせる訳にはいかない。」


とても強い意志。
きっと誰にも言わずにここに来たのであろう。
母はそんな桐谷様をみて、とても立派になられましたね。と声をかけた後、私に言った。

「……さあ、鋏を……。」

私は鋏を持ち替えて、赤い糸を手で掬った。
微かに震える手。
でも、切らなければならない。
この人の意志はとても、強い。




ぱちん。




赤い糸は切れた後、砂のようにサラサラと消えていった。
そして新たなる赤い糸が現れた。
こんなにすぐ現れるのか!!

一番左の、誠実そうな眼鏡の男性。

「こちらの方と繋がりました。」
私がそう言うと、桐谷様は写真を手に取った。



「……ありがとうございます。」



私達は桐谷様を見送り、客間にまた戻った。
鋏を手入れして片付けながら母に聞いた。

「なんか……この仕事、お母さん楽しかった?」

変なことを聞いてしまった。
でもやはり将来の職業って、辛いけど楽しくてやりがいが!みたいなのを想像してたし。

「楽しい、楽しくないではないのよ。うちはね1000年続く、生きた恋神さまなのよ。神様ってみたことないでしょ?うちは唯一、人間と共にここに存在する神様なのよ。」

ババーン。
神様……?占い師じゃないの?ただの。
まぁ恋愛を切ってる訳だから神様って敬われたってことなのか?

「そんなに深く考えなくていいのよ、そのうちわかるわ唯ちゃんなら♡」 



そのうちわかる。



その時母の言った言葉が数日後だったなんて、思ってもいなかった。