紫はようやくベッドを離れてリハビリを出来る程度まで回復した。
 リハビリをしている彼女の時間を知っているのか、光琉はたまにリハビリ室へ顔を出し、意地悪を言いに来る。

 「痛い、痛い、もう無理です」

 「細川さん、頑張って。あと一歩だよ」
 
 理学療法士が私を叱咤激励する。
 すると、悪魔の笑みを浮かべた主治医がまた現れた。

 「おい、ちゃんとやれよ。もう、リハビリしないといつまでもナースに戻れないぞ。いつまでも甘えてるなよ」

 周りは先生の毒舌に驚いている。それはそうだろう。普段は貴公子然として皆を騙しているのだ。私は彼の真実を知ったから、驚かないけどさ。

 「……鬼。悪魔……」