「その夢。私も知ってる。私も見た、同じ夢。相手は先生そっくりの顔で、女性は私そっくりだった。だから、イヤだったの。それに、お母さんがお父さんに捨てられたこともトラウマになってる。先生を信じ切れないの。でも好きなの……だから自分から別れたいって言えなかった。だから、逃げた。本当にごめんなさい」
 
 「紫もその夢を見たのか!どういうことなんだ……お前が理由は言えないって言ってたのがやっとわかったよ。これじゃ、言えないよな。俺もあのとき聞いて信じろって言われても無理だったと思う。これも見つけたけどお前が作ったんだろ?」
 
 そう言って、桐の小さな箱を開ける。そこには私の作った梅の練り香。

 「そうだよ。それと同じものがネクタイに入っているの」

 そして、別の箱を私にくれた。これは?

 「開けてみろ」