「……なぁ凛さ」

「うん?」



煌人は口に手をやったまま、目だけをチラリと私に寄こす。

そして、



「”好き”ってまた言ったら……呆れる?」

「……」



そんな事を言った。



「(いつもなら”ウザい”で返す。だけど……)」



煌人のキラキラして私を欲しがるような目に、応えたいと思った。



「呆れない……から、」

「から?」

「もっと言ってもいいよ、煌人」

「!」



「ズルすぎるだろ」と、今度は、顔全体を手で覆った煌人。

私も自分で言った事だけど恥ずかしくなって……煌人から目を逸らす。


そんなちぐはぐな二人を乗せた電車は、ちょうど私の降車駅についた。

煌人が降りる駅は……もう一つ後だよね?



「じゃ、じゃあね煌人。今日はありがとう」

「いや待て!送ってくから、」

「ううん。お父さんが迎えに来てくれてるの」



すると煌人は、私に伸ばした手を引っ込める。

「そっか」と言って、優しい笑顔でほほ笑んだ。



「気張らずに、いつもの凜でな」