その頃。

泡音ちゃんが私の心配をしてくれてるなんて、微塵も知らなかった私は――



「お父さんお母さんの所まで、もう少しなのになぁ」



両親のお墓に一番近い駅の、ホームにある長椅子に座っていた。

もう夕方。

さっきまで学生が駅にたくさんいたけど、ラッシュが過ぎたのか閑散としている。



「この駅から20分歩けば、お父さんとお母さんの所に行けるのに」



なんで、ここに来たのか分からない。

気づいたら、この駅まで来ていた。

財布とスマホだけ持って。



「鞄もないって……どういう事よ、私」