兄は衛兵の中でもずば抜けて治癒魔法の実力が高く、周りから一目置かれている。

 人当たりもよく、弟の俺が言うのもなんだが綺麗な顔をしているので、よく女性に声をかけられている。
 特定の誰かを作るつもりはないのか、困りながら誘いを断っているのを度々見かける。

 気恥ずかしいので本人には言わないが、俺はそんな兄を自慢に思っている。


「それにしても、リュカが治癒魔法を教えてほしいなんて言ってくるとは思ってなかったよ」

「俺もそんなこと頼む日が来るとは思ってなかった。今まで使えなくて困るようなことなかったから」

「それは俺がいつも治してあげてるからだろ?」


 兄さんがやれやれと言ったように俺を見る。


「頼んでないのに、兄さんがいつもどこかから聞きつけて、治しに来てるだけだろ。まあ、治してくれてるのには感謝してるけど」

「リュカは変なとこで意地っ張りなとこがあるけど、そうやって素直に感謝を伝えられるところは昔から変わらないな。流石、俺が育てただけある」


 兄さんが自慢気に言う。
 そして頭を撫でてこようとするので、それを軽くあしらうと、兄さん少し不満そうな表情をする。