「……あなたの、目的はなんですか?」

「さっきも言ったろ? 君のことをここから助け出したいって」

「そんなの、信用できません」


 彼女がもう一度、俺に視線を向ける。
 その顔は悲しそうに歪められていた。

 俺が絶対にここから助け出すから、そんな顔しないでほしい。


「君が俺のことを信用できないのはわかるよ。けど、信用してほしい。そうやって君が怯えずに暮らせるようにしてみせるから」


 オリバーが起きてくるかもしれないと警戒し、彼女の頭をもう一度撫でてから部屋をあとにする。

 本当は傷を治してやりたいが、俺は治癒魔法を使えない。

 こんなに治癒魔法が使えないことを悔やんだことはないかもしれない。
 怪我なんて時間が経てば治るし、どこから聞きつけたのかふらっと現れては治癒魔法の腕が立つ兄が治してくれていたので、今まで必要に感じたことはなかった。

 兄に治癒魔法を教えてもらおうと心に決め、オリバーのいる部屋に戻る。

 彼はいびきをかいて、ぐっすりと寝ていたので、この隙に合鍵を作らせてもらおうと、テーブルの上に乱雑に置かれたこの家の鍵も取ってから、そっと家を出て、知り合いの鍵屋に作成を頼む。

 夜遅くで申し訳なかったが、訳を話すと快く引き受けてくれ、ものの数分で合鍵が完成したので、またオリバーの家に戻り、彼のポケットに鍵を戻す。

 明日から忙しくなるぞ、と気合いを入れ、家に帰る。