俺が部屋に入ると、彼女は顔を青ざめさせて震えながらこちらを見ていた。


「そんなに怖がらないで」


 彼女を怖がらせないように出来る限り優しく声をかける。

 しかし、彼女の震えはおさまらない。
 まあ、こんなので震えがおさまるなんて端から思っていなかったので想定内だ。

 でも、どうしたら彼女を安心させられるだろうか。
 俺に傷つける意思がないことを伝えられるだろうか。

 少し考えていると、昔兄にしてもらったことを思い出す。

 早速実践しようと彼女に手を伸ばすと、ぴくりと震え身構えるように目を閉じた。

 そりゃあ、触られるのは怖いよなとは思うが、少しでも俺に敵意がないことを伝えようと、そのまま彼女の頭を優しく撫でる。

 すると彼女は綺麗な瞳を大きく開きこちらを見る。


「さっきはごめんね。オリバーに合わせるしかなかったけど、君のこと怖がらせたよね。俺はリュカ・ブラウン。君はリーベだったよね」

「そう、ですけど、私に何か用ですか?」


 彼女が震えながらも答えてくれる。
 会話が出来て、少し嬉しくなる。


「君を助けたいんだ」

「そんなこと言って、私が逃げ出そうとしたら、あの人と一緒に殴るんでしょう?」

「そんなことしないよ。余程酷い目にあってきたんだね。少し時間はかかるだろうけど、絶対に君をここから助け出してみせる」


 俺の言葉を聞いた彼女は視線を逸らす。
 きっと俺のことが信用できなくて怖いんだろう。