そんな理由からマティルダに辛く当たっていたが、彼女は表情を崩すことはなかった。
ならこのままでいい……そう思った。

そして何故かマティルダは頑張ってこの婚約を阻止しようと動いていたようだが、ローリーはそれが成功するわけがないと半ば諦めた気持ちでいた。
今回、王家では雷魔法を使える子供が生まれなかったのもそうだが、両親は優秀なマティルダを気に入っており、他の令嬢に見向きもしていない。

(抵抗しても無駄なのに……馬鹿な奴だ)

自分達は決まった道の上を歩いていくことだけしかできないし、そこにローリーの意思は関係ない。
幼い頃にそう学んでいたローリーは足掻いて逆らうことは無駄だと知っていた。
だからこそ、マティルダが己の運命に争おうとするのをみていると滑稽に思えるのと同時に感じたことのない苛立ちに襲われていた。

しかし彼女はめげるどころか、前へ前へと進もうとしている。

身分関係なく令嬢や令息達と仲良くして、周囲に気を配り、父や母の役に立とうとしている姿を見ていた。
兄であるライボルトとの仲は微妙らしいが、懸命に自分の有用性を証明しようとしているように思えた。
それが次第に目障りだと思うようになり、それはライボルトも同じ気持ちだと気づいた。