マティルダは今日も温かい太陽の光と鳥の囀りで目を覚ました。

(今日もいい日になりますように……!)

日課のように祈っていた言葉だが、毎日がとても良い日なので尚更気分がいい。
悪役令嬢の役目を終えて、第二の人生を歩みだしているマティルダはベンジャミンとの生活に満足していた。

周囲の豊かな森とのんびりとした時間。ぽかぽかとした温かい家の中で昼寝し放題。
何ひとつ、不自由のない生活は幸せそのものだろう。

(まさに夢にまで見た理想の生活……!)

今まで苦労してきた分のご褒美だろうか。
マティルダはホロリと溢れる涙を拭って、窓の外を見ながら感慨にひたっていると、背後から抱きしめられるようにして声が掛かる。
マティルダは驚き、肩を揺らした。


「マティルダ、おはよう」

「お、おはようございます!ベンジャミン様」

「いつになったら〝様〟が取れるのかな?愛称で呼んでくれたらいいのに……ベンジャミンって毎回呼ぶと長いでしょう?」

「えっ……!?それは……たぶん、もう少し経ったらです」

「ふーん。マティルダは恥ずかしがり屋だね」