本日は我が家ですき焼きパーティ。

テーブルの中央には卓上コンロ。

コンロの上には大きなお鍋、そしてその中には長ネギ、焼き豆腐、しらたき、春菊、そして田舎暮らしをしている両親から送られてきた、大量の霜降り和牛がグツグツと美味しそうな音を立てて煮えている。

一応我が家では割り下も醤油・みりん・砂糖・水で手作りする。

菜箸で具材を置いていく私の右隣には響さん。

響さんは料理が苦手なので、ひたすら皆のグラスにビールを注いでいる。

私の前の席には順がいて、私の雑な具材の置き方を、綺麗に並べ直している。

そして私の斜め前には勇吾君が、煮えたお肉を誰よりも早く口に入れている。

「あのさ。」

順が鍋の中の具材を取り分けながら言った。

「澤乃井さんがここにいるのは判るよ?だって芽衣ちゃんの彼氏だからね。だけどさ、どうして芽衣ちゃんにフラれた勇吾君まで参加してる訳?」

「だってさぁ、メイメイ、もう俺と二人きりじゃ会ってくれないって言うからさ。せめてこういう集まりには駆け付けたい訳よ。メイメイと二人きりじゃなきゃいいんですよね?澤乃井さん?」

「二人きりが駄目なんて当たり前だろ?芽衣は俺のなんだから。本当はメイメイなんて気安く呼んで欲しくないんだけど。」

「へえ。一体誰のお陰で警視総監賞が貰えたんですかね?」

「もちろん、あの性悪女と付き合ってくれた勇吾君のお陰だよ。」

いつものように、響さんと勇吾君の間には、見えない火花がばちばちと散っている。

「もう~響さんも勇吾君も喧嘩しない!美味しいものは皆で仲良く食べましょうね!」

私がそう窘めると、響さんと勇吾君は小さな声ではーいと声を揃えて返事をした。

私は3人の皿にすき焼きの具を取り分けてあげた。

なるべく公平にしたつもりだけど、響さんのお皿は少しだけお肉が多いかもしれない。

たまにはこの3人の男と一緒に美味しいものを食べるのも悪くないな。

私は甘い醤油タレが絡まって煮えた霜降り和牛を、かきまぜた生卵に浸し、一口で口の中に入れた。

甘くて蕩けそうな肉のうまみが、舌の上で幸せのカルテットを奏でていた。



「んっ!おいしーー!!」



私がそう言うと、3人の男は一斉に私を見て微笑んだ。









fin