話がしばし途切れた時に、勇吾君は突然スマホに写ったある女性の写真を私に見せた。

長い髪の毛先をカールさせ、赤いルージュが似合う、大人っぽい女性だった。

「誰?この人。」

私が聞くと、勇吾君はにやにやと嬉しそうに口元を緩めた。

「それ聞く?聞いちゃう?」

勇吾君はいつもの少し掠れた声でおどけてみせた。

「この人は俺の会社の取引先の担当さんの知り合い。綺麗だろ?」

「うん。綺麗な人だね。」

私はこの後に勇吾君から聞かされる言葉を予想し、心でため息をついた。

また勇吾君の片想いが始まったか・・・。

勇吾君は猪突猛進でちょっといいなと思ったら、なんのアプローチもせずにすぐに告白してしまう。

しかし勇吾君のことを何も知らない相手の女性は、何も知らない男の告白に呆れ果て、そして勇吾君はあっけなくフラれる。

その繰り返しを私は何回見せられてきたのだろう。

そしてフラれてやけ酒につき合うのはいつも私の役目なのだ。

「今度はその人に告白するの?」

私は呆れた顔で勇吾君を見ながらフライドポテトをつまんだ。

「いや。もう告白した。」

「え?」

「なんと!オッケーを貰いました!!」

「へ、へえ・・・。」

私は内心の動揺を悟られないように笑顔を作ると、いつもより少し高い声で勇吾君にエールを送った。