金曜日の夜。

私はファミレスの窓際の席で、ドリンクバーの野菜ジュースをストローで吸っていた。

ドリンクバーの飲み物の原価が一番高いのは、野菜ジュースだって誰かが言っていた。

でも本当は元が取れなくても、甘いココアが飲みたい。

しばらくすると、紺のスーツを着た勇吾君がハンカチで汗を拭きながら、私の前の席へ座った。

「お待たせ。」

「ううん。私も今来たとこ。」

いつも休日のラフな格好しか見ていないから、スーツの勇吾君は新鮮だった。

「ふーん。勇吾君、一応ちゃんとした格好で通勤してるんだ。まあまあイケてるじゃん。」

私が冷やかすと、勇吾君は何をいまさらと言った顔でジャケットを脱いだ。

「これでも一応都会で働く、エリートサラリーマンなんだぜ?」

「ほほう。じゃあ、今夜はエリート様にゴチになりますか。」

「ちょっと待ってくれよ。まだ給料日前なんだからさぁ。」

「冗談だって。」

「メイメイと話すのは気楽でいいよな。文香さんには給料日前だからって愚痴なんてこぼせないよ。」

「ちょっとぉ。私にも文香さんと同じくらい気を使ってよね。」

私達はそう言って笑い合うと、タブレットでそれぞれの食べたいメニューを注文した。

勇吾君はステーキセット、私はミニサイズの海老ドリア。