夏の日差しが眩しい日曜日の正午、私は響さんとの待ち合わせ場所に立っていた。

散々迷ったけれど、身体を動かす場所に行く可能性も考えて、デニムのワンピースに黒いレギンスを履いてきた。

足元はお気に入りの、オレンジのスニーカー。

駅のロータリーにある花壇の近くでソワソワしながら立っていると、濃紺のクラウンがゆっくりと私の側で止まった。

運転席の扉が開き、黒いVネックのサマーセーターにジーパンを履いた響さんが降りて来た。

「悪い。待った?」

時計を見ると、まだ待ち合わせ時間の10分前。

緊張の為、30分も前に着いてしまった私の方が悪いのに、気を使わせてしまった。

「全然!私も今さっき来たところです。」

「なら良かった。さ、乗って。」

「は、はい。お邪魔します。」

響さんが助手席の扉を開いて、執事のように助手席へいざなってくれた。

助手席に座った私はシートベルトを閉めながら、さりげなく車内を見渡した。

フロントには「交通安全」のお守りがぶら下げられている他には何も飾りはなく、掃除も行き届いていて、シンプルですっきりとしている。

ただ後部座席に大人用の毛布が丸まっている。

あれは何に使うのだろうか?

私がその毛布をじっと見ていると、響さんが弁明するように言った。

「たまにそこで仮眠するんだよ。夜通し仕事することも多くてね。」

「へえ・・・。大変ですね。」

響さんは一体なんの仕事をしているのだろう?

「ごめんな。煙草臭いだろ?さっきまで一服してたから。今、窓開けるよ。」

「あ、大丈夫です。」

しかしすぐにドアウィンドウが下げられ、涼しい風が車内を吹き抜けた。

「さて、出発するか。」

「どこへ行くんですか?」

「それは着いてからのお楽しみ。」

響さんがアクセルを踏むと、車は勢いよく車道を走りだした。