「仕事はなにしてんの?」

やっと笑いが治まった澤乃井さんが、鶏肉を食べ終わった後の串を置くと、私に尋ねた。

「家電メーカーのお客様対応係にいます。いわゆるクレーマー対応みたいな仕事です。そのストレスを食欲にぶつけちゃって、その結果体重が増えちゃったみたいで。でも情けないことに、弟に太ったって言われるまで自分では気が付かなかったんです。」

「ふーん。前も言ったけど、芽衣、そんなに太ってないけど。」

「いやいや。そんなことありませんって。」

「むしろ、痩せないで欲しいくらい。」

「え?」

「俺、ムチムチでぷにぷにな子がタイプだから。」

「・・・デブ専ってヤツですか?」

「デブ専とはまたちょっと違うかな。」

そう言って澤乃井さんは天を仰いだ。

私は思い切って、常日頃から思っていたことを尋ねた。

「澤乃井さんはどんなお仕事をされているんですか?いつも忙しそうですけど・・・」

フィットネスクラブでの澤乃井さんは筋トレの途中でも、スマホからの呼び出しで慌てて帰っていく。

「まあ・・・しょっちゅう呼び出される仕事、とだけ言っておこうかな。もっと仲良くなったら教えてやるよ。」

「仲良くって・・・」

すると澤乃井さんは箸をテーブルに置いて、頬杖をつきながら私の顔を覗き込んだ。

「男どものロッカールームでの最近の話題は、芽衣のことで持ち切りだ。可愛い女の子が入ってきたってね。だから俺は他の誰よりも早く先手を打つことにした。」

「・・・・・・?」