短冊を間近で見てみると、「ヒーローになりたい!」「お花屋さんになりたい!」など子供たちが書いたであろう願い事があって、思わずほっこりする。

「なぁ、小春も書いてみる?」

すぐ近くには、書くスペースにとテーブルと椅子が置いてあって、短冊と色ペンが用意されてあった。

『せっかく来たんだし、書いてみようかな』

そう言って、楓くんと隣同士で座った。

『なんか久しぶりに書く気がする』

小学生の頃は、“学校で話せますように”なんて毎年書いてたっけ。

その願い事は今も叶ってはいないけど……。

神頼みするのではなく、それは自分が頑張って場面緘黙症を治さない限りその願いは叶わないと気付いて書かなくなった時期があった。

それに加えて、中学になるにつれて短冊を書く機会は減ってしまったのだ。

久しぶりの短冊を目の前に、なにをお願いしようか考えていると、隣にいる楓くんはスラスラとペンを走らせていた。

なにをお願いしたのだろう?

位置的に文字は見えないけれど、あとで聞いてみよう。

ふと、ある願いが思いついて、どうか叶いますようにと思いをのせて紙に書いた。