しばらくして最寄駅に着いた。

歩いて目的地へと向かうと、ドーム型の建物が見えてきた。

科学館と一緒になっていて、館内にプラネタリウムがある。

上映まで少し時間が余っているので、科学館の中を見て回ることにした。

「もうすぐ七夕か」

とあるものを見て、楓くんはぽつりと呟いた。

そこには、大きな文字で七夕イベントと書かれてあって、いくつもの天の川の写真や一本の笹に短冊がたくさん飾られてあった。

「七夕の日って、毎回、雨か曇りだよな」

『そうだね。天の川まだ見たことない』

「写真なんかはいっぱいあるけど、実際はどう見えるんだろう?」

『いつか見てみたいな』

短冊の近くには、手作りポスターが壁に貼られていて、天の川にまつわる伝説や神話が紹介されていた。

「へぇー、英語ではMilky Way(ミルキーウェイ)って言うだな。日本語でミルクの道。初めて知った」

その元となるのは、ギリシャ神話が由来しているみたいだ。

『日本では、織姫と彦星の七夕伝説が有名だよね』

「そうだな。でも、それって、なんだか可哀想だと思うんだ」

『可哀想?』

「だって、織姫と彦星は1年に1回しか会うの許されていないだろう。俺だったら無理だわ」

『……多分、私も無理だと思うよ』

好きな人とは、ずっと側にいたいし、1年に1回だけとか我慢できない気がする。

そこで、ふと疑問が湧いて恐る恐る楓くんに聞いてみた。

『楓くんって、彼女いるの?』

その問いに、「いないよ」と即答した楓くん。

「彼女いたら、小春と一緒に来てないし」

その言葉に、なんだか嬉しいと思う自分がいる。