電車に乗ると、休日にも関わらず割と空いていた。
ドア近くの座席に肩を並べて腰を下ろす。
間もなくして、プシュッという音とともに扉が閉まって、ゆっくり電車が動き始めた。
「なぁ、小春って、普段出掛けたりするの?」
『ううん。しないよ』
「俺はバイトあるから最近はあまり行ってないな」
『じゃあ、今日はリフレッシュしようよ』
「そうだな。バイトのことは忘れて、小春と一緒に楽しまないとな」
楓くんの言葉に思わずドキッとした。
一緒に楽しむって、それって、なんだかデートみたい。
そう考えては、恥ずかしくて頬が紅潮する。
ちょうどトンネルに入り視界が薄暗くなって楓くんに気付かれることはなかった。
明るい光とともにトンネルを抜けると、田舎の町から徐々に都会の町へと変わる。
ガタゴトと電車に揺られながら、窓に映る景色を眺める。
いつも病院がある時は、この電車を使っているのだけど、今日は隣に楓くんがいるからなのか景色がなんだか違って見えた。



