それから、時間は経って6時間目。

体育館でバスケの授業。

スポーツなんて、緊張して体を動かすことさえままならない私にとっては苦痛な時間。

「今からパスの練習をします。2人ペアを作って下さい」

2人ペアか……。

他の人たちは仲良い友達とすぐにペアを作っている。

……どうしよう。

動けずに私だけ余ろうとしていたところ、楓くんが私のところに来てくれた。

「小春、一緒のペアになろう」

楓くんにそう言ってもらえて嬉しい。

今まで、私のこと誘ってくれる人なんて誰もいなかったから。

先生とペアになるか、余った者同士で組むことがあったけど、だいたい嫌な顔をされることが多かった。

でも、楓くんは私に対して嫌な顔なに1つしない。

それどころか、緘動で動けずにいる私の代わりに、楓くんはバスケットボールがいっぱい入っている籠から1つ取って来て、私のところに来るなり、ボールを手渡してくれた。

「小春さ、思いっきりボール投げてみなよ。どんな球でも受け止めてやるから」

楓くんはそう言って、ボールをキャッチする為少し距離を取った。

楓くんにボールを投げなきゃ……!

そう思うのに、緊張して体が思うように動かない。

もともと運動音痴な私にとっては、楓くんに真っ直ぐパスするのも至難の業。

周りは友達となんなくパスし合っているのに、なんで、私は緘動で動くことすらできないんだろう?

楓くんにボールを投げることができず、渡されたボールをじっと見つめる。