「1つ誤解しているようですが、小春さんはわざと黙っているわけではありません。心の中では、本当は話したいと思っています。ですが、声がでなくて本人自身相当苦しんでいるんです」

楓くん……。

「場面緘黙症のこと知っているんですよね? だったら、どうして理解してあげようとしないんですか? 小春さんの心に少し寄り添ってみてはどうですか?」

楓くんは私のお母さんにズバッと言ってくれた。

なのに……。

「……なんなのよ、あなたは。行くわよ、小春」

お母さんは私の腕を掴むなり、強く引っ張って家の中に入れた。

楓くんにさよならを伝えられないまま、お母さんはドアを乱暴に閉めてしまった。

それからというものの、お母さんと不穏な空気がまだしているけれど、なにも言ってくることはなかった。

自分の部屋に入ると、楓くんに最大限の感謝の気持ちを込めてメッセージを送った。

【今日は、本当にありがとう】

すると、すぐに楓くんから返信が届いた。

【どういたしまして。いつか分かってもらえる日が来るといいね】

楓くんから返ってきたその言葉に、また涙が零れ落ちた。