目指すは、少し山を登った先にある展望台。
真っ暗な闇で足元は分かりにくく、スマホのライト機能を頼りに歩く。

「階段あるから気を付けてな」

他愛ない会話を交わしながらも、危ない場所など教えてくれる楓くん。

胸のドキドキは止まることを知らない。

それどころか増すばかりだ。

展望台に到着して空を見上げると、そこには満天の星空。

夏の大三角がある部分には、淡く輝く雲状の光の帯、天の川。

「綺麗……!」

生まれて初めて見るその光景はなんとも美しく、思わず息を呑む。

ある程度の条件がうまく揃わなければ、見ることが難しいとされている天の川。

月の出ていない日時、晴れた日の夜、街灯など辺りに灯りがなくて、高台の場所が最も良いとされている。

だから、七夕の日にその条件がちょうど揃って、楓くんとこうして展望台に来たというわけだ。

綺麗な天の川を眺めては、今頃、空の上で織姫と彦星は出逢えているんだなと思うととてもロマンチックだ。