君が導き出してくれた私の世界


昨日まで、あんなに学校に行くのが怖かったのに、今では学校に来て良かったと思う。

1歩踏み出してみないと分からないとは、まさにこのことで、楓くんが1人ずつ説明していたことも、みんなが私のために手話を覚えてくれたことも気付けないままだったかもしれない。

気付いて良かった。

気付けて良かった。

みんなと過ごす時間はこんなにも楽しい。

時間が経つのがあっという間に感じて、気付けば昼休みの時間になった。

以前までは、楓くんと唯花ちゃんと一緒に屋上で弁当を食べていたけど、今日は教室で食べることにした。

唯花ちゃんは、「彼氏と食べてくるから葉山くんと2人で食べてね」と私に耳打ちするなり彼氏さんがいる隣の教室へと向かって行った。

私たちを気遣ってくれたのかなと思うけど、机をくっつけては、目の前にいる楓くんにドキドキしてしまう。

「小春と弁当食べるの久々だよな」

『そ、そうだね。私が学校行かなかった間、誰と食べていたの?』

「さすがに彼氏がいる有野と食べるわけにはいかないから、あいつらと食べてたよ」

楓くんが視線を向けた先は、手話を教えてあげていた男子グループだった。

『一緒に食べなくて良かったの?』

「いいんだよ。俺が小春といたいだけだし」

その言葉に胸がキュンとした。

ーー『それは、葉山くんがこんなにも春ちゃんのことを想っているってことだよ』

ねぇ、楓くん。

唯花ちゃんが教えてくれた通り、脈ありだって思ってもいいかな。

誰よりも大切で、特別な存在なんだよ。