その日の夜。

窓を開けると、心地よい風が部屋に入ってきた。

私がいつも眠る前にする習慣。

それは、夜空を見上げること。

この町は、田舎過ぎて不便なところが多いけれど、唯一好きっていえるのは、星が綺麗に見えるところ。

今日は、曇ってなくて一段とよく見える。

そして、私はこの星空を見上げてはいつも思うことがある。

明るくみんなを照らす太陽みたいな人になれなくても、真っ暗な世界でも自分の存在を放てるようなキラキラと輝く星みたいな人になれたらいいなと。

そう願って、星に向かって手を伸ばす。

だけど、どんなに頑張っても届きそうになくてだらりと腕を下ろした。

「小春ったら、いつまで話さないつもりかしら?」

夜中に目が覚めて1階にあるトイレへと向かい用を済ませると、リビングの方から喋り声が聞こえた。

扉は閉まっていて様子は窺えないけれど、お父さんとお母さんが私のことで話をしているのが分かった。

「まぁ、そのうち話すようになるだろう」

いつも楽観的なお父さん。

家族のことよりも、仕事のことしか考えていない。

「それならいいんだけど。でも、もう今年で17歳になるのよ。将来のことを考えると、やっぱり心配だわ」

それに、心配性のお母さん。

両親は、私が場面緘黙症であること知っているのにも関わらず、わざと話さないんだと思っているに気がいない。

もうこれ以上、盗み聞きしたって意味がない。

その場から離れるように、静かに階段を登った。