「邪魔なのはあなたですわ。殿下の道を塞ぐなんて、あってはならないこと。まさか、そんなことも知らないで、この学園に入学しましたの?」


 思わぬ再会で頭に血が上っているんだろうけど、それは私だって同じ。
 大体、どうやったら私にも記憶があるって妄信できるのかしら? 突撃できるのかしら。普通は隠すでしょ。普通は。


「あたしは殿下じゃなくて、あんたに用があるのよ!」


 醜いがなり声が耳を突く。忘れていた記憶が呼び戻される。
 音が、映像がフラッシュバックする。
 真黒な髪を振り乱し、レイラと揉み合いになって、私はそのまま道路へ――――


「カンナは俺の婚約者だよ。無礼を許すはずがないだろう?」


 ユージーンはそう言って、私の肩を抱いた。震えが止まる。私はほっとため息を吐いた。

 レイラは未だ、わーわー何かを叫んでいる。実にみっともない姿だ。これが前世なら――――ううん、前の世界であっても見苦しい行いだ。