○学校。思い悩んでかなり早めに登校してしまった潤。
 転勤が決まっていろいろと考えた結果……。

潤(決めた。引っ越すことはしばらく誰にも言わないでいよう)
潤(修学旅行前の楽しい気持ちの時にしんみりさせたくないし……)

 よし、と決意しながら教室の扉を開ける。
 するとそこには葉澄が一人でいた。

葉澄「おはよう、潤」
潤「葉澄くん⁉ あれ、今日って休みって言ってなかった⁉」

 潤は自分がメッセージを見逃していたのかとスマホを探して焦る。

葉澄「ん。朝だけ時間あったから来ちゃった」
葉澄「どうしても潤に会いたくて」
葉澄「ほら、最近、ちょっと元気なさそうだったし」
潤「(気づかれていたことに内心でドキッ)そ、そう? や~、なんか夏バテで疲れてたのかな~?」
葉澄「…………」
葉澄「……もし、悩みとかがあるなら言ってね。俺、潤が困ってるなら力になりたいんだ」
潤「……ありがと」
潤「わざわざごめんね。このために学校来てくれたの?」

 心配してくれる葉澄の気持ちは嬉しいが……。

潤(心配かけないようにしなきゃ)
潤(いつもどおりに)
潤(大丈夫、転校なんてこれまでにも何回も経験してきたじゃん)

 いつも通りに振る舞おうとする潤。
 葉澄は自分の気持ちが潤に伝わっていないと判断したのか、自分のポケットを探り、潤の手を取った。

葉澄「潤に……言っておこうと思って」
潤「何?」
葉澄「俺、今、仕事頑張れてると思うんだ。貰った運とか、チャンスとかは大事にしたいって思えた。前はなんとなく求められるままにこなしてた仕事だけど、今はちゃんと自分のものにしたいって思ってる」
潤「うん」
葉澄「潤と会って、俺は変われたんだ。だから……」

 薬指にシンプルな指輪を嵌められる。突然すぎる展開に驚く潤。

葉澄「高校を卒業したら潤と結婚したい」

 アレンからのアドバイスを受けた葉澄は、大真面目に、赤くなりながらプロポーズ。潤は……。

潤「葉澄くん」
潤「わたしたち、別れよう」