アレン「やー、キリちゃん、絶対葉澄っちのこと気に入ると思った~」

 得意げにドヤるアレン。葉澄はぎこちなく会話。

葉澄「元々の知り合いなんですか?」
アレン「『東コレ(ファッションショー)』の飲み会で知り合ったばっかりだよ!」
葉澄「……? アレンさんって今年、ショーに出てましたっけ?」
アレン「んーん。ユウヤ(モデル)に呼ばれて、飲み会にだけ顔出したんだ~」

 ユウヤは葉澄と同じ事務所で、葉澄にしては先輩にあたる。

葉澄「ユウヤさんと仲いいんですね」
アレン「そう。友達。今度、三人で飯行こうよ」

 フランクに誘ってくるアレンにたじたじの葉澄。

葉澄「そ、うですね。ぜひ……」
アレン「葉澄っち、絶対行きたくない顔してるじゃんw」

 アレンに見抜かれて「うっ……」となる葉澄。
 コミュ障の葉澄にとっては、あまり仲良くもない年上二人と食事なんてハードルが高すぎる。
 ふと、悟ったような顔でビールを飲むアレン。

アレン「まー、いいけどね。無理に誘ってるわけじゃないし」
葉澄「す、すみません」
アレン「別に責めてないってw それが葉澄っちのキャラでしょ」
葉澄「……や、でも、その……」

 子どもの頃はただ言われるがままにカメラの前に立っていた葉澄だが、さすがにそれではいけないのではないかとは思っている。
 もっと自分で売り込んだり、現場でうまくやっていかないとという悩みや気後れしている様子の葉澄。
 アレンはそんな葉澄の様子をじっとみて、話題を変える。

アレン「お笑い芸人の鯛之介さんいるじゃん。あの人、葉澄っちと似てるよね」
葉澄「え゛⁉」

 一発芸やオーバーリアクションが持ち味のおじさん芸人・鯛之介。
 もちろん、容姿は似ておらず、ハイテンションおちゃらけ系の鯛之介とどこが似てるんだ⁉ となる葉澄。

アレン「あ、顔じゃなくてw あの人、楽屋ではめーっちゃ無口なんだよ! 知ってた⁉」
葉澄「いえ……」
アレン「普段は存在感を消して、周りの人の観察に徹してるらしいよ」
アレン「葉澄っちもさー、普段はぼそぼそしてて自信なさげなのに、カメラ向けられるとちゃんとイケメンの顔になるじゃん」
葉澄「それは……(仕事だから)」
アレン「1個1個いい仕事してたら、見てくれる人はちゃんといるよ。だから、誘われても無理なら無理って言えばいいんじゃん? ……ま、俺は人脈で仕事取るタイプだから、あちこち顔出しちゃうんだけど~」

 人付き合いで悩んでいそうな葉澄に真面目にアドバイスしつつ、最後はおちゃらけるアレン。

アレン「気が向いたらメシ行こうな~」

 蓮美の元を去り、遅れてきた男性に「監督~! お久しぶりでーす!」と駆け寄るアレン。
 葉澄から見たアレンはおちゃらけたパーティーピーポーだと思っていたが、フットワークの軽さであちこちに顔を出し、人脈を作り、それが営業になっていることに気づく。
 桐島の名刺を見ながら考え込む葉澄。

葉澄(ただなんとなく始めた仕事だけど……)

 これまでのことを振り返る葉澄。
 SNSで『御門葉澄まじかっこよかった #キミコイ』という呟きを目にしたり。
 「葉澄~! (雑誌の)表紙決まったぞ!」と喜ぶマネージャーの顔。
 桐島やアレンに「葉澄くんのイメージに合う」と言われたこと……。

葉澄(俺、もうちょっとこの世界で頑張ってみようかな)

潤「葉澄くーん!」

 駆け寄る潤。

潤「……どうしたの?」
葉澄「ん? うん……」
葉澄「今日、来るの迷ってたけど……やっぱ来て良かったなって」

 どこか清々しい表情の葉澄の顔を見て微笑む潤。

潤「そっか。それなら良かった」

 笑ってくれる潤の姿にほっとして、手を繋ぐ葉澄。

 常に自信がない葉澄にとって、潤はどんな時でも受け止めてくれる存在。
 今日も、凛々子やアレン、その他芸能人を目にしても「うわ~本物だ~」くらいのノリで、決してアレンに色目を使ったり、葉澄と比べたりしない潤。葉澄が芸能人であっても、そうでなくても態度は変わらないんだろうな、と思えて安心できる。

 葉澄に見つめられている潤はどぎまぎ。

潤「ど、どうしたの、葉澄くん?」
葉澄「俺さ、もっといろんなこと頑張ってみるよ」

葉澄「潤」
葉澄「ずっと俺の側にいてね」

 葉澄の決め台詞に重なる形で花火が上がる。ドーン。
 潤はムードに赤くなりつつ、葉澄のセリフは花火の音にかき消されてはっきり聞こえなかった。

潤「ご、ごめん、葉澄くん。もう一回言って」
葉澄「もう無理」
潤「ええっ、そんな」

 「葉澄くんから告白されたような気がするのに」な潤と、「恥ずかしすぎてもう1回なんて言えない」な葉澄。
 二人とも赤くなってわたわたしていると、大人たちにからかわれる。

参加者「高校生カップルがいちゃついてまーす」
参加者「ひゅーひゅー」
参加者「そっとしていてあげなさいよ! ムード台無し~!」

 あははは……と笑う潤。
 照れでバツが悪そうな顔の葉澄だが、年相応の高校生といった珍しい表情の葉澄。(「葉澄っち照れてる~?」なんてからかわれても良いかも。共演者たちも葉澄の表情が見られて嬉しそう) 
 楽しい花火大会の夜は更けていく。