先に壊れたのは、意外にもあなたの方だった。

私よりも速く歩ける足を持って、私よりも高い身長を持って、私よりも硬い筋肉を持っていた、あなたの方。

問い続けるあなたに私は答えられない。

叫び続けるあなたを私は見つめることしか出来ない。

私達がいなくなっても世界の歯車は回り続ける。

それは当たり前の事。どうしようもない事。

私達は何者にもなれない。

何者にも、なる必要はない。


あなたの漆黒の瞳から流れる涙を、ただただ美しいと思った。





何者にも、なれない。