「できました。」


テレビ画面を夢中で観始めた頃、先輩の手料理が運ばれてきた。


「美味しそうですね!」


「ありがとうございます。
今見てるの終わってからでいいですよ。」


「…じゃああと7分だけ…。」


私だったら、アニメみてないで多少手伝えよ、と思う気がするけど、先輩ってそういうの思わないのかな。


「はい終わった!お待たせしました。食べましょう!」


テレビを消して、隣に座って大人しく待っててくれた先輩に声をかける。


「はい、そうしましょう。」


「いただきます。」


「いただきます。」


「これすごく美味しいです!
先輩は料理の才能もあるんですね。」


「大袈裟ですよ。ただのオムライスだし、誰でも作れます。」


「少なくとも私はこの味に仕上がらない自信があります。」


「ふふ。なんですか、その自信は。」


「全く料理したことない故の自信です。
あ、でも先輩にばっかりさせるわけにもいかないので、私が作る時は教えてください。」


「それは一緒に住みましょうってことですか?」


「…え?あ、いや、そういうつもりではなかったけど、あれ、でもそういうつもりなのかな……。」


「俺は料理結構好きですよ。特に菅野さんが食べてくれるって思ったらやる気出ます。」


「先輩が苦手なこととか嫌いなことあるんですか?」


「女の子との会話は基本的に好きじゃないし、思ったことを口に出すのも得意じゃないし、あとは人が大勢いるところは苦手ですね。」


「全部意外。1つ目は最近分かってきましたが、全く気づきませんでした。先輩隠すの上手いですね。」


「まあそうですね。」


「思ったことあればなんでも言ってくださいね。」


「好きです。」


「そういうことじゃなくて。いや、そういうことも含むけど……。」


「じゃあひとつだけいいですか?」


「はい、どうぞ。」


「菅野さんの食べてる姿やっぱり好きです。可愛い。」


「もー、だからー…」


「だから、また来てくれませんか。
家なら今日みたいに邪魔が入ったりしないし、俺だけが菅野さんを見ていられるので。」


「たとえ外だとしても、別に誰も私の事なんて見てないと思いますよ?」


「そんなことないですよ。菅野さん可愛いから。」


「まあけど、また来るのはいいですよ。
というかむしろ、いいんですか?私ほんとにご飯食べただけですよ?」


「いいんです。菅野さんが自分の作ったご飯を食べてるの最高なので。」